第87話29.10年後 〜エピローグ〜
「健太郎さん!みてみて!沢口くんがテレビに出てるよ!ツテコの部屋!」
「こいつ悔しいくらいに出世したよなぁ。こんな有名になって。」
「しーーーー!ちょっと見てみようよ!」
ルールルルルル ルールルルル〜
「さて、今日のお客様はタレントの沢口壮太さんです。どうぞー!」
少しケバい芸能界の大御所女性が、笑顔で沢口を迎えた。
沢口は慣れた手つきで車いすを操作し、ゲストの位置についた。
「こんにちはー。ちょっと緊張しています。」
沢口の顔がテレビにアップになる。
血色の良い肌が健康そうに見える。
「車いすでのゲストは沢口さんが放送以来初めてになるんですよ。」
「いやぁ、そうなんですか。光栄です。」
「視聴者の皆様にご紹介させていただきますと、沢口さんは現在32歳。
奥様は女優の広樹ナナさん。
大学卒業と同時にプロバスケットのチームに入団が決まっていたのに、交通事故にあい、選手生命を絶たれてしまいました。
その後は、バスケの解説から、甘いルックスも生かしドラマの出演、最近ではバラエティー番組にも出演し、タレントとして大活躍されています。」
沢口は恥ずかしいのが、顔を赤くして照れている。
「いやぁ、そう言われると、すごそうに聞こえますが、ただ必死にやってきただけなんです。」
「あの、お聞きしても良いと伺っているでお聞きするのですが、事故の事ですね。
当時は、バスケットボール選手として、それはそれは大人気でしたから、あのニュースが本当に衝撃的でした。」
「はい、僕が一番衝撃を受けたと思います。
当時の僕にはバスケしかなくて、バスケで生きていこうって思っていたものですから…」
「大きすぎる人生の岐路でしたね。」
「ええ、本当に。そんな時に素晴らしい人と出会いまして、彼のお陰で、僕自身がいままでの自分を振り返って考えるようになりました。
当時僕はすごい人気者で、有頂天になってたと言うか、調子に乗ってたと言うか…
若さというのもあり、周りの人からちやほやされて、なんか頑固でワガママな奴だったように思います。
簡単にいうと、すごく嫌なやつだったんです笑
事故にあって、多くの人が僕から離れていきましたね…。」
「その素晴らしい人というのは、どのような方だったんですか?」
「そうですね、不器用なんだけど、まじめにまっすぐ生きている人で、周りの人をとても大切にしている人でした。
当時の僕とは正反対で。
僕の動かない足をみて、ひっそり泣いている母を見て、僕はわがままばかりで、母すらも大切にしてこなかったと反省しました。
あの時、僕は彼に会えて本当に良かったです。感謝しています。」
「では、その方たちに向かってメッセージをどうぞ。」
沢口は笑顔を絶やさずに話していたが、司会者の無茶振りに動揺する。
「えぇ?メッセージですか?」
すこし上を向いて考えたあと、満面の笑みでメッセージを送った。
「鈴木さーん、僕元気にやってまーす!奥さんとどうかいつまでもお幸せにー。」
おわり。
———
物語はここでいったん一区切りになります。
長かったと思うのですが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
お時間のある時に、続きも是非、読んでいただけたら心の底から嬉しいです。
4章からは新ストーリーになります。
呪いの謎を解いていく話が始まり7章まであります。
また、ベルギウスが失恋したままで可哀想なので、純粋な恋もさせたいなと思って書き始めました。
5章 フローマー(入浴シーンあり)
6章 マルゲリータの日記
7章 最終章
という予定です。
執筆の励みになりますので一つでも良いので★頂けたら嬉しいです。
今後も何卒よろしくお願いします。
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