小さな姿
「柊…」
困ったような、驚いたような、心配そうな、複雑な表情の黒崎くん。
「もう大丈夫。心配かけてごめんね」
死神協会。久しぶりに来る。
「そっか…。まだ辛いとは思うけど、普段通りにな」
「うん! わたし、叔父のところに行ってくるね」
「あぁ」
わたしは協会長室に向かう。
すれ違う人たちは相変わらずポーカーフェイスの中、たまに憐れみの目で見てくる人がいる。わたしと叔父夫婦が身内であることは、極一部しか知らない。憐れみの目で見てくる人は、その中の人ではない。
ではなぜ? わたしの目が腫れているから? 威張って言えることではないけど、割といつものことだ。どこかがおかしい? それはない。家を出る前に、全身鏡でチェックしてきたのだから。
いろいろなことを考えているうちに、協会長室まで来てしまった。わたしはノックをする。
「どうぞ」
心なしか、声が弱い気がする。
「失礼します」
「…あぁ、お前か」
「しばらくお休みをいただき、申し訳ありません。ありがとうございました。今日から頭を切り替えて務めていきます」
「うむ。…身内であることは、アイツが死んだ時に皆に言った」
「そう、だったんですね…」
「まぁ、気にするな」
「…はい」
「用は済んだか」
「はい。失礼しました」
わたしは一礼をして部屋を出る。
叔父はやつれ、急に小さく見えた。あんなに怖いと思っていた人が…。ズルズルとその場に座り込む。
「叔母さまどうして…」
「琴音?」
「…あっ、田沼くん」
顔を上げると、田沼くんが驚いた顔でわたしを見ていた。
「なにしてるんだ、こんなところで?」
「あ、うん。少し協会長にお話があって」
「そっか。今回のことは、その…」
「もう大丈夫。それより田沼くん、受験はどう?」
話をすり替える。叔母の話はもういい。
「あぁ、昨日だったんだよ。まぁ五分五分だな。後悔はしてないけどな!」
「そっか。受かるといいね! じゃあ、わたし戻るね」
「おう!」
田沼くんと別れ、黒崎くんが待つ資料室に向かった。
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