卒業式


 卒業式は退屈。長々と話を聞いたり、立ったり座ったりの繰り返し。


 ステージの上では、元生徒会長が答辞を読んでいる。それが終わると、校歌斉唱があって退場となる。


 呑気に早く終わらないかなと考えていると、近くから鼻をすする音が聞こえてきた。誰かが泣いている。答辞で泣くところなんて、あっただろうか。ひとりが泣き始めたのをきっかけに、その周りの人たちがつられて泣き始める。わたしは驚いた。


「卒業生、起立」


 驚いている間に、答辞は終わっていた。


「校歌斉唱」


 伴奏が始まる。高校は校歌を歌う機会が少なく、正直ちゃんと覚えていない。歌うのも聞くのも、これが最後。


 式中、わたしは一度も泣かなかった。


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