クロサキ チヒロ

 仕事期間は大抵が “その時” だ。


 稀に、魂を送る日まで、何日か期間を設けられていることがある。その場合、予定通りに送ることができるよう、対象者を監視していなければならない。


 わたしのように、学校へ通っている人や会社務めの人たちには、そういった期間のある仕事は回ってこないようになっている───はずなのに。


「えっ?」


 奈々ちゃんと別れた後、すぐに新しいバディと会い、耳を疑うようなことを聞いた。


「だから、3日間コース」


「が…、学校…」


「そんなの、休む以外方法なんてないけど?」


 当たり前のことを言うように、わたしの目の前に立つバディは冷たい目をして言い放つ。


「前の教育係みたいに、僕は甘くないよ」


「…あの、すみませんが、あなたのお名前は?」


「……」


「……」


「……」


「……?」


 わたしをジーっと見るだけで、なにも言わない。思わず、首を傾げた。


「…黒崎くろさき 千尋ちひろ


「黒崎くん…」


「言っとくけど、君の1コ上だから」


「えっ」


「出席足りなくて留年した」


「……」


 黒崎くんは固まるわたしを置いて、さっさと行ってしまう。


「なに突っ立ってんの。さっさと向かうよ、落ちこぼれ」


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