受験勉強


 魂を送る日々。気付けば12月になっていた。


 周りは受験勉強に、より一層力を入れている。わたしたちが通う学校、実は進学校。就職するひとなんて、ほとんどいない。


「寒い…」


 窓の外では、床がちらついている。積もらなければいいと思いながら、帰り支度をする。


「琴音」


「!? た、田沼くん…。びっくりした…」


「え、ごめん」


「あ、こっちこそ…。それで、どうしたの?」


 田沼くんはわたしの前に来る。


「あぁ、ここ教えてほしいんだ」


「えっと、この問題は…」


 見せられたのは数学の問題集。わたしは分かりやすいように説明する。


「あー、なるほど。じゃあ、こっちは?」


「んー、あ。これはさっきの応用みたいな感じかな」


 田沼くんに勉強を教えていると、だんだんひとが集まってきた。


「柊さん、俺にも教えてよ」


「あ、あたしにも!」


「え、えと…」


 今日もこれからお仕事があるわけで。だからそんなに時間がないわけで。困惑していると、田沼くんと目が合った。


「田沼くん…」


「あ、これから?」


 コクンと頷く。


「柊」


 ドアの方から、わたしを呼ぶ声がした。誰かなんて、見なくてもわかる。


「遅い。時間ないから」


 黒崎くんは席まで来て、わたしのバッグを持つ。


「勉強教えてもらいたかったら放課後以外にして。コイツ、お前らに構ってる暇ないんだよ」


 そう言い捨てて、そそくさと言ってしまった。みんなは呆然としている。


「ご、ごめんなさい!」


 わたしは謝って教室を出た。


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