ぬくもり


「く、黒崎くん!」


「なに」


 彼は不機嫌そうにしている。


「いくらなんでもあの言い方は…」


「…ああやってたかる方が悪いと思うけど。とりあえず大学行くって考えの奴らだろ、どうせ。日頃から努力しないで、間近になって焦って勉強する奴になんか教える必要ない」


 黒崎くんも集られたのだろうか。


「あ、黒崎くん、バッグ!」


「…あ。けど、いいよ。もうすぐだし、重くないし」


「でも悪いから…」


「…どーぞ」


「ありがとう」


 わたしはバッグを受け取り、肩にかける。


「手、冷たい」


「今日手袋忘れちゃったの」


「風邪引くって」


 そう言いながら、自分の手袋を脱いで、わたしにはかせてくれた。暖かい。


「手袋ないくらいで、風邪引かないよ? それに、黒崎くんが寒くなっちゃう」


「女の子は身体冷やすと良くないって両親が」


「た、確かにそうだけど…」


「おとなしくはいてろ」


「ハイ…」


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