お見舞い


 病院独特の、消毒の匂い。いくら嗅いでも好きにはなれない。


 叔母の病室は個室になっている。ノックをしても返事がない。少し考えて、そっとドアを開けた。


「し、失礼します…」


 叔母は眠っていた。ベッドの傍らにある、丸イスに座る。久しぶりに見た彼女はやつれていた。


「…ん、琴音ちゃん…?」


「おはようございます」


「…来てくれたのね」


「一昨日、仕事でこの病院に来た時、叔母さまを見かけたんです。それで、昨日黒崎くんが教えてくれました」


「そうだったのね」


「わたしのことより、もっとご自分の心配をしてください…。わたし、叔母さまがいなくなるなんて嫌です」


「琴音ちゃん…」


 いつの間にかわたしの目からは涙が溢れていた。


「ごめんね、心配かけちゃって。今回は疲労で倒れただけだから大丈夫よ。…でも、琴音ちゃんの言う通り、もう少し自分の心配しないとね。ボーイフレンドを紹介されるまでは頑張らないと!」


 そう言って叔母は笑う。


 いくつか気になることがあったけど、怖くてなにも聞かなかった。


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