卒業アルバム


 練習の後、予定通り卒業アルバムが配られた。クラスの人たちはメッセージを書きあったり、写真を見て笑ったりして盛り上がっている。わたしはひとり、ペラペラと1ページずつ見ていく。


 あ…。


 黒崎くんを見つけた。いつものポーカーフェイス。彼らしいと思った。2ページ捲ると、わたしのクラスのパージ。わたしは情けない顔で写っている。何度も笑ってと言われた気がする。


「こーとーねっ!」


「わっ!?」


「琴音も書いてくれよ!」


 そう言って差し出されたアルバム。さすがと言うべきか、クラスの中心人物である彼のアルバムは、メッセージがびっしりと書かれていた。わたしが書けるスペースはない。


「あー、書くとこないな。じゃあこっちに!」


 田沼くんは表紙の裏側の空白部分を指す。


「えっ、こんなところに書いていいの!?」


「書いてくれないとやだ」


「わ、わかった…。──はい」


「おぉー、さんきゅ!」


 田沼くんはアルバムを持って、どこかへ行ってしまった。


 最初は見た目が怖くて話しかけるのでさえ勇気が必要だつたのに、今では気兼ねなく話せるようになった。怖いのは見た目だけで、中身はすごく優しい。わたしも田沼くんも死神をやっていなければ、関わることなんてなかった。


 …黒崎くんとも。意地悪だけど、本当は優しい人。きっと、田沼くんよりも優しい。いつか並べるようになりたい。


「そろそろ終わるよー。席戻ってねー」


 先生の一言で、みんなは席に戻る。


「明日で皆さんは卒業しますが、」


 先生の目には、既にうっすらと涙が浮かんでいる。明日は泣いてしまうだろう。そんなことを考えていたらホームルームが終わった。


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