ボーイフレンド…?


 今日は余分にお弁当を作る。卵焼きは、いつもより念入りに。


 あとはなにを作ろう?


 卵焼き、きんぴらごぼう、ほうれん草のごま和え。冷凍食品は使わない主義なので、おかずは全て手作り。レシピ本と冷蔵庫の中身を見比べながら考える。すると、足音が聞こえてきた。


「…?」


 リビングのドアが開き、叔母が入ってくる。


「叔母さま! お帰りなさい」


「ただいま。と言っても、すぐ出るのだけど。…あら、お弁当作っていたの?」


「はい。他になにを作ろうか考えていたところです」


 叔母はなぜか、すごくニコニコしている。


「あの…?」


「琴音ちゃん、恋人ボーイフレンドが出来たの?」


「ぼ…!? あっ、ち、違います!」


 慌てて否定する。ふたつのお弁当箱を見てニコニコしていたらしい。


「今日のお昼休みにちょっとあって、黒崎くんに作ってあげることになったんです」


「そうだったの。黒崎くんって、もしかしてバディの?」


「はい」


「そう〜。プライベートでもパートナーになればいいのに…。あの子、良い子じゃない?」


 再び叔母がニコニコし出す。


「だめですよ! お仕事できなくなっちゃうじゃないですか」


「あら。どうしてそう思うの?」


「なんとなく、ですけど…。仕事もプライベートもパートナーだと、だめな気がするんです。…あっ、わたしの場合は、ですけど。というより、黒崎くんに迷惑だと思います」


「…そう。わたしは、琴音ちゃんが、この人とお付き合いしてますって恋人を紹介してもらうのが夢なの。だから、早く紹介してちょうだいね」


 語尾にハートマークが付く勢いで言われてしまった。


「っ、大変! 急がなきゃ!」


 叔母はバタバタとリビングを出ていく。本当に多忙な人だ。きちんと休めているのだろうか。


 わたしは冷凍庫から、作り置きのおかずをいくつか取り出し、ビニール袋に詰める。


「じゃあ琴音ちゃん、もう行くわね!」


「叔母さまコレ! 作り置きなので冷凍なんですけど、良かったら叔父さまと食べてください」


「ありがとう。じゃあ、行ってきます」


「いってらっしゃい」


 叔母を見送り、お弁当作りを再開した。


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