タヌマ アキト


「柊さん、おはよ」


 翌日、いつも通り学校に行き、上靴に履き替えていると挨拶をされた。驚いて声の主を見ると、掃除グループのリーダーだった。


「お、はよう…」


「いつもこのくらいの時間?」


「うん…」


「早いなー。俺、いっつも寝坊するから無理だ」


 彼はケラケラと笑う。


 そんな彼を横目に、わたしは頭をフル回転させる。名前がわからないのだ。普段、人との関わりを避けていたためだろう。


「あの、大変失礼だとは思いますが…」


 どう頑張っても思い出せそうにない。わたしの急な声掛けに、彼は目を丸くしている。


「な、なに…」


「お、お名前を、教えてください」


「……あははははっ!!」


 また昨日と同じように、お腹を抱えて笑い出した。この人は怒らないのだろうか…。


「やっぱ柊さん面白おもしれーわ。俺、田沼たぬま 秋斗あきと


「田沼くん…」


 どこかで聞いた名前だ。でも、どこで聞いたのかは思い出せない。


「教室行こーぜ」


「あっ、うん」


「1時間目なんだっけ」


「確か現国だったような…」


「うわっ、だりー…」


 わたしたちは教室に向かった。

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