誰だって難しい
協会の中はいつも静寂に包まれている。話し声なんて、滅多に聞こえない。
「…この仕事は、」
おもむろに黒崎くんが口を開く。
「ほとんどが見ず知らずの奴だけど、稀に昨日みたく知り合いに当たる時がある。昨日まで普通に話してたのにって時もある。死神は死期を悟られないよう、表情を出してはいけない」
「…うん」
「でも、知り合い相手だと、それは難しい。流石の僕でも」
「えっ!?」
わたしは驚く。昨夜、彼は一瞬でも表情を崩すことはなかったのだから。
「僕だって人間だ」
困ったように笑う。
「…噂では、昇格には知り合いに当たった時の対応が大きく関わると言われてる」
「じゃあ、絶対に知り合いを送るの?」
「さぁ? あくまでも噂だ。実際、僕はAランクだけど、昨日が初めてだった」
昇格するには、様々な条件があることだけは理解できた。
「とりあえず、柊は僕の言ったことを忠実に守ってればいい。必ず昇格するから」
「はい」
わたしたちは対象者のリストを取り、現場へ向かった。
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