16歳⑴


 ひどく怯えた目。わたしは何度も見てきた。その度に苦しくなるのだ。


 怯えた目をしている人たちのほとんどは、まだ生きたいと願っている。今回もそう。


 まだ16歳の、女の子。


「いい加減ついてこないでください!! 警察呼びますよ!!」


「……」


「…っ」


 女の子はわたしたちを睨みつけて走り出す。もちろん、わたしたちは追いかける。


「…あっ」


 わたしはなにかにつまずいて転んだ。黒崎くんは「早く」とだけ言って先に行く。その後を、ささっと砂を払って追いかける。


「助けてください! あの人たちが追いかけてくるんです!!」


 数百メートル先で、女の子は一組のカップルに助けを求めていた。わたしたちは走るのをやめる。


「誰もいない、けど…」


「あそこにお揃いの黒いマントを着たカップルがいるじゃないですか!!」


 カップルはとても困惑していた。確かに女の子が指を指している先には、わたしたちがいる。でも、制服を着ている為、彼女にしか見えていないのだ。


 それからわたしたちはカップルではない…。


「誰もいないよ…」


「いるじゃないですか!!」


「……」


 カップルは顔を見合わせる。


 そういえば、人が増えてきた気がする。好奇の目をしているから、女の子の声を聞いて寄ってきたのだろう。


「と、とりあえず、警察行こう!」


「そうだね。わたしたちも一緒に行くから、話聞いてもらおう?」


 ここから交番まではそう遠くない。女の子が頷いたのを確認し、3人は交番に向かって歩き出した。野次馬たちは帰っていく。


 わたしたちは3人の後をついていく。足取りが重い。


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