愛
冬休みはあっという間に過ぎていき、気付けば後3日で休みが終わる。
今日はリスト整理の日。ピリピリした雰囲気は、1週間経つ今でも続いている。
「…そういえば、新年度から新しい部署出来るらしいね」
「部署?」
首を傾げる。
「聞いてない? 今は対象者を見送るのみだけど、新年度からは、“居るべきではない”魂を送る部署が出来るんだって。まあ、まだ詳細は決まってはいないらしいけど」
「そう、なんだ…」
居るべきではない。その意味はわかる。なんとなく、背筋がヒヤッとした気がした。
「大変そうだけど、やりがいはあるだろうな」
「うーん…。わたしは今のお仕事がいいな」
「怖いから?」
「うっ」
「だっさ」
「だって怖いんだもん!」
「ハイハイ、お子様には無理だもんねー」
「お子様じゃないもんー」
そんな言い合いをしつつ、リストはしっかりと確認する。
途中、わたしは手を止めた。心臓がドクンドクンと、音を立てる。
「…なにしてるの。さっさと手動かしなよ」
「……さんの、リスト、が、」
「なに?」
「お母さんのリスト…。出てきたの…」
まさか見つけるとは思わなかった。
母の名前と顔写真が載っている。間違うはずがない。裏にはコピーされた報告書の備考欄。
柊 雪音を庇い、死神:
そう書かれていた。
父のリストがないことから、父は母の死神だったことがわかる。家庭にいながら、仕事をしていた父。その心境を考えると、心が押し潰されそうだ。
「いいお父さんだったんだね。…死神としては良くないんだろうけど…」
「…うん。お母さんのことが本当に大好きで、いつも取り合いしていて…。両親は、わたしの理想像なの」
「ふーん。柊なら、そうなれるんじゃない」
「そうかな?」
「多分ね」
わたしはリストをめくる。
家に帰ったらアルバムを見よう。そう思いながら。
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