言いたい奴には言わせておけ


「琴音!」


 翌朝、学校の玄関で上靴に履き替えていると、声を掛けられた。


「田沼くん、おはよう。今日は遅いんだね」


「はよ。寝坊しちまってさー」


「あらら…」


「それより昨日、掃除できなくて悪かったな」


「あ、うん。全然大丈夫」


 彼の一言で、忘れていたことを思い出した。


“幽霊”


 でも、大丈夫だ。今日もしっかりツインテールにしているし、わたしはちゃんと生きている。黒崎くんの言葉を借りるなら、言いたい奴には、言わせておけ。グッと小さくガッツポーズをする。


「…なした?」


「あっ、いや、なんでもないよ! ほら、早く教室行こう!」


「? おぉ」


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