回顧


 気付けばあと3日で家庭学習期間という名の休みが終わる。休み明け2日間で卒業式の練習をして、その翌日に卒業式だ。


「早かったね、3年間」


「僕は4年間だけど」


「……」


 わたしは言葉を失くす。黒崎くんは留年しているんだった…。


「ま、気にしてないけど。…最初学校で柊を見かけた時、いじめられてるのかと思った」


「えっ、」


 黒崎くんと初めて会ったのは、何ヶ月か前。まだ1年も経っていないのだ。わたしが体育館に向かう途中で、黒崎くんは体育館から教室に向かう途中だった。


「暗い雰囲気で、俯いてひとりで歩いていたから」


「…悪口は言われるけど、いじめってほどではないかな」


「でも柊は変わったよ」


「?」


「身なりをちゃんとするようになったし、表情も明るくなった。なにより笑うようになった」


 優しい目をしている。最初の頃とは大違いだ。


「黒崎くんも、変わったよ」


「僕が?」


「うん。最初は無表情で怖かったけど、今ではよく笑ってくれるし、柔らかい表情もしてる」


「……」


「わたし、まだまだ黒崎くんの足引っ張ってばかりだけど、いつか並べるように頑張るから、これからもよろしくね!」


「…っ」


 黒崎くんはスッと目を逸らしてしまった。そのあとで小さく、こちらこそと言った。


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