勇気と後悔


 放課後の掃除時間。今日は教室当番だ。


 何人かは掃除をしないでお喋りに花を咲かせている人たちがいるのは、きっとどのクラスも同じだろう。


 うちのクラスも例に漏れず、いつも決まって同じ人が掃除をしない。男子がふたりに、女子がひとり。名前は覚えていない。


 普段は田沼くんが注意してくれるけど、今は職員室に行っていて不在。進路関係と言っていたから、いつ戻ってくるかわからない。


 注意しようか迷っていると、横から視線を感じた。見ると、同じ掃除グループの女の子。グループは男女3人ずつの6人編成。でも、掃除しているのはわたしと、わたしを見ている女の子だけ。


 これはきっと、注意してっていう訴え…、だよね。わたしだって怖いのに…。


 意を決して3人に近付く。この前から言いにくいことを言う機会が多い気がする。


「あ、あの!」


「なに」


「そ、掃除、しませんか。みんなでやった方が、早く終わりますし…」


「は? なに、偉そうに。幽霊みたいなクセに」


 ギャルが怖い。その周りにいる男子も怖い。


「俺ら受験生なワケ。受験しないお前と違って忙しいんだよ」


「つか、お前就職出来んのかよ? 雇ってくれるところなさそー」


 3人はゲラゲラ笑う。


「…お喋りしていないで、勉強したらどうなんですか? 受験生、なんですよね。勉強するのでしたら、わたしはなにも言いません」


 言ってから後悔。わたしは怖くなって、彼らから離れて掃除を再開した。


「…萎えた」


 男子がひとり、不機嫌そうに呟いて、掃除を始めてくれた。


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