二面性


 黒崎くんの予想は的中。昼休みに入り、携帯のニュースをチェックすると、犯人が捕まったという速報が出ていた。


「良かった…」


 思わず安堵の息が溢れる。


「だから言ったしょ。昼くらいには捕まってるって」


「!!」


 突然降ってきた声に驚く。


「…ビビり過ぎ」


「く、黒崎くん…、なんで…」


「それ、教えようと思って。いつまでもビクビクしてたら心臓に悪いだろ」


 学校にいる時の彼は、少しだけ物腰柔らかな感じがする。相変わらずのポーカーフェイスだけど、声色が違う。


「…てかさ、柊って友達いないの?」


「!?」


 どストレートに聞かれる。


「ひとりで弁当食ってる女子なんて滅多に見ないぞ」


「…わたしは、空気みたいな存在だから」


「……ふーん」


 周りと関わろうとしない、わたしが悪いのだと思う。


「ま、いいんじゃない。無理して仲良しごっこする必要なんてないわけだし。それに、柊はちゃんとここにいる。空気みたいになるのは、仕事の時だけだ」


 真っ直ぐで、力強い目。思わず魅入ってしまいそうなほど。


「じゃ、帰りまた来る。念の為送ってやるよ」


 わたしが最後に食べようと残しておいた卵焼きを口に入れ、黒崎くんは去っていった。


「わたしの卵焼き…」


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