柊家
黒崎くんに家まで送ってもらい帰宅する。
玄関ですぐに異変に気付いた。いつもはないはずの革靴が一足。わたしは恐る恐るリビングへ向かう。
「た、ただいま帰りました…」
「…あぁ」
わたしを見ることなく返事をする。
部屋に行こうと踵を返すと、
「お前はいつになったら昇格するんだ?」
と言われた。わたしが答える間もなく、叔父は続ける。
「まったく…。私に恥をかかせないでくれ。兄だけで十分だ」
「…すみません…」
それだけ言うと、わたしはそそくさとリビングを後にした。
柊の家は代々死神をやっているらしく、わたしの父と叔父も、死神となった。父は落ちこぼれなのに対し、叔父はSランクの秀才で協会長。
叔父はプライドが高く、代々名のある柊家に生まれたことを誇りに思っている。だから、名家に生まれたのに落ちこぼれな父とわたしを恥だと言い、毛嫌うのだ。
わたしは自分なりに、柊の名に恥じぬよう努力はしているつもりだし、きっと父もそうしていたはずだ。わたしを悪く言うのは構わないけど、父を悪く言うのだけは、やめてほしいと思う。
父はもう、この世にいないのだから。
わたしが10歳の時、買い物に出掛けた両親は事故に巻き込まれ、帰らぬ人となった。今でもその日のことを鮮明に覚えている。
両親のお葬式で、ずっと泣いていたわたしに、叔母は「今日からわたしたちが琴音ちゃんの両親よ」なんて言ってくれていた。それを聞いた叔父は、蔑んだ目をして、「面倒事を残して逝きやがって」と呟いていた。
あの日から、叔父がわたしを見る目は変わっていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます