最後の手紙


「──じゃあ、僕は帰るよ。これ、キッチンの棚に置いてあったから渡しておく」


 黒崎くんを見送った時に渡された真っ白な封筒。琴音ちゃんへと書いてある。わたしは部屋に戻って封を切り、手紙を読み始めた。


『琴音ちゃんへ。


 琴音ちゃんがこの手紙を読んでいる時、わたしはもういないことでしょう。


 8年前、泣いている貴女を引き取った時、不謹慎だけど娘ができたようで嬉しくて、これからの生活が楽しみでした。


 だけど中々休みが取れず、琴音ちゃんには随分と寂しい思いや、我慢をさせてしまいましたね。


 本当に、ごめんなさい。


 夫はいつもキツくて心無いことばかり言っているけど、本心では琴音ちゃんをとても心配しているのよ。


 わたしが倒れた時も、「琴音に言ったらショックで寝込むんじゃないか」って、それそれは慌てふためいていたわ。


 あれでも寂しがり屋なところがあるから、この先が心配です。


 あの人をお願いね。


 最後に、琴音ちゃんはわたしの生きる希望でした。


 貴女ならきっと、素敵な死神になれることでしょう。


 一番の理解者になってくれるパートナーと、巡り合うはずです。


 貴女は貴女のペースで頑張ってください。


 遠くても、わたしはいつも見守り、応援しています。


 わたしたちの元へ来てくれてありがとう。


 柊 有紗』


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