16歳⑷


「なに…これ…!? どういうこと!?」


 香坂さんは周りで起こっている全てを理解できていない様子。普通はそうだ。


「あたし…死んだの…?」


「香坂ミヨ様。あなたの魂を、冥土へお送り致します」


「は? 意味わかんない。なんで? あたしまだ死にたくない!!」


 彼女は泣き出す。心が痛い。


「香坂様。残念ですが、あなたはもう戻れず、この扉の先へ行くしかありません」


「なんで…」


「最初から決まっていたのです」


 淡々と説明する黒崎くん。


「…お母さんは、どうなるの…。あたしがいなくなったらお母さんは…」


「申し訳有りませんが、そのご質問にはお答えできません」


「……」


 香坂さんは、自分を抱きしめて泣き叫んでいる母を見る。


「…香坂ミヨ様。お時間です」


「お母さん…、ごめんね…。最期まで迷惑かけちゃってごめんね…」


 彼女は涙を拭いて、扉を見据える。


「これを開けて行けばいいんでしょ?」


「…、はい」


「本当、意味わかんない。なんなの、これ」


 そう言いながらも、扉を開けた。


「それでは…、お気を付けて」


 彼女は光の階段を上っていく。扉はゆっくりと閉まり、静かに消えていった。


「…お疲れ」


「…お疲れ様です」


「…柊、大丈夫? 顔色悪い」


わたしはフラフラと、黒崎くんにもたれかかってしまった。


「ごめんね。ちょっと…」


「…弱いな。さっさと戻るぞ。歩けるか?」


「うん、大丈夫…」


わたしたちはお母さんの死神に会釈して、協会へ向かった。


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