ヒイラギ コトネ


「死神になるためには、ふたつの方法があるんだけど、それは知ってる?」


「ふたつ? 応募用紙しか知らない」


「そっか。もうひとつはね、生まれが死神の家系であることなんだよ。柊は代々死神をやっていて、それなりに名のある家みたい。父と叔父夫婦も死神で、母だけは一般人なの」


「じゃあ協会長と副協会長って…」


「わたしの叔父と叔母だよ」


 黒崎くんは目を見開く。相当驚いたらしい。


「両親はわたしが10歳の時に事故に巻き込まれて亡くなったの。それからは叔父夫婦に引き取られて、死神をやることになったんだ。嫌って言ったんだけど、そんなの御構い無しに登録されちゃって、やらざるを得なくなったの」


「……」


「…わたしの父はね、“落ちこぼれ” だったの。叔父はSランク。わたしも落ちこぼれ。だから叔父にはいつも嫌味を言われて…。叔母はすごく優しい人で、励ましてくれたり、家に帰って来る時間を見つけて、ご飯を作ったりしてくれるの」


 黒崎くんは黙って相槌を打って話しを聞いてくれている。


 ふと見上げた空には、たくさんの星が輝いていた。


「……死ぬまで死神でいるしかないのは、わたしに男兄弟がいないからだよ。柊を継ぐ人が、わたし以外、誰もいないの」


「ねぇ」


「い、いひゃっ、」


「なんでさっきから無理して笑ってんの」


 頬をむにっとつままれる。


「無理してまで笑うところ? 泣きたかったら、いつもみたく泣きなよ。今は死神の柊じゃなくて、普通の女の子のひい、…っ、琴音だろ」


“普通の女の子”


 そう言われて、我慢していた涙が溢れる。


 柊と言いかけて琴音に言い直してくれたのは、きっとわたしが死神であることを意識しなくていいようにだろう。


「ぶっさいく」


「うぅ〜…」


「思いっきり泣くといいよ」


 頬をつまんでいた手を離し、今度は頭を撫でてくれる。


「僕は一般家庭に生まれたから、…琴音の苦しみをあまりわかってあげられないだろうけど、話を聞くくらいならできるから。それに、バディなんだし、なにかあったら我慢しないで言いなよ。


「あり、がと…」


「ん」


 なにを思ったのか黒崎くんは、撫でるのをやめ、泣きじゃくるわたしの髪で遊び始めた。


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