自殺⑶


「ゴホゴホッ。…俺、死んだのか…」


 彼の魂が、動かなくなった自分を見下ろして呟く。


「山本祐二様。あなたの魂を、冥土へお送り致します」


「冥土? あの世か。地獄行きだろうな」


 乾いた笑い。


 今後の流れを説明していると、玄関が勢いよく開き、中年の男性と、山本さんと同じくらいの若い女性がバタバタと入ってきた。


「!!」


 女性は倒れている山本さんを見て、言葉を失い、泣き崩れた。彼(の魂)は苦しげな表情を浮かべる。


「レイコ…」


「…山本様、お時間です」


「…そうか。レイコ、ごめんな…」


 彼は扉を開く。ため息をひとつついて、一歩踏み出した。


「お気を付けて」


 遠のいていく背中。ゆっくりと閉まる扉。そしてそれは消えていく。


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