ミヤタ ナナ⑴


 夜中。宮田奈々が目を覚ます。柊はと言うと、僕の肩を枕代わりにして仮眠中だ。


「…琴音、頑張り屋さんでしょう」


「…まぁ」


「結構冷たく接してたけど、なぜか懐いてきて…。本当、不思議な子だわ」


 呆れたような言い方でも、表情は穏やか。柊は宮田奈々の中で、お気に入りだと伺える。


「泣き虫で、弱虫な琴音を、お願いね」


「言われなくても。…それに、Aランクまで昇格させるって約束してるから」


「そう。それなら、安心だわ」


 言った直後、彼女の容態は急変。柊はすぐに目を覚ました。


「っな、奈々ちゃん!?」


 医師や看護師がやってきて、処置をする。僕らはただ黙って見ているだけ。心なしか、柊が震えていた。


「…まだだって」


「怖い…。いなくなるなんて、いや…」


「…僕だって、そうだったよ」


 まりあの時、本当に辛くて苦しかった。大切な人や知り合いの予定を弄る奴らの気持ちが、少しだけわかったのも事実。


「…だから、頑張ろ」


 こういう時、どう声を掛けるべきかわからない僕は、それしか言えなかった。


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