よく知った名前


 わたしたち3年生は冬休みが明けた1週間後、ふたたび長期休みに入った。大学受験の為の、家庭学習期間だ。


 もちろんわたしは朝からお仕事で、今日は病院に来ていた。


「次どこだっけ」


「確か中学校付近だったような…」


 わたしはリストを出して確認する。


「うん、合ってた。次は一条中学校前の交差点…」


「…どうした?」


「今、叔母が…」


「えっ」


「ち、ちょっと待ってて!」


「待て!」


 わたしは黒崎くんの制止も聞かず、叔母と思われる女性が入っていった病室の前に行く。


 ひいらぎ 有沙ありさ


 ネームプレートには、しっかりとそう書かれていた。


「柊、時間ないから」


 どこか狼狽うろたえている様子の黒崎くんに連れられ、病院をあとにした。


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