嘲笑

「対象者、つまりお前にしか見えない」


 そう。わたしたち死神は、協会から支給されている制服ローブに身を包むと、対象者以外には姿が見えなくなる。


「それより、警察呼ぶっつっといて母親かよ」


 黒崎くんは嘲笑あざわらった。


 榊さんの眉間の皺が、より深くなる。


「さっきの説明だけで良かったのに…」


「思ったことを言っただけだ。警察呼ぶにしては来るのが早過ぎたしな」


「え、そ、そう、だけど…」


 黒崎くんの言ったこともわかる。再び足音が聞こえてきた時、わたしが違和感を感じたのは事実だ。


 ただ、彼の発言は、今この場で言うべきではなかったと思う。


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