オレンジ色の中で


 特に話すこともなく、ただただ歩く。


 最近は陽が落ちる時間が速くなってきた。もう少ししたら、空はオレンジ色に染まるだろう。


「僕のクラスの男だった」


「…うん」


「多分、アレ受け入れてる」


「そっか」


 残酷な現実を受け入れられる人なんてそうそういない。信じやすい人なのか、終わりを望んでいる人なのか。


 わたしはきっと、受け入れられない。


「柊」


「ん?」


「今日、久しぶりの休みなんだから、ちゃんと休みなよ」


「あ、うん。…黒崎くんは、お休みないの?」


「いらない。することないし」


「疲れないの?」


「夜寝てるからね」


「すごいね、黒崎くん」


「柊みたいに軟弱じゃないからさ」


 わたしは言葉を失う。


「…じゃ、気を付けて帰りなよ」


「ありがとう。お仕事、頑張ってね」


「…うん」


 わたしたちは別れ、それぞれの行く先に向かう。


 今日は叔母が、美味しいご飯を作って待っていてくれているはず。わたしは楽しみにしながら家を目指した。


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