進路


 今日はあいにくの雨。


 こんな日は髪が広がる。かと言って、特別なにかをするわけではない。傘を差して学校に向かう。


「あ、プリント…」


 途中で忘れ物をしたことに気付く。進路決定のプリントだ。取りに戻ると、完全に遅刻する距離まで来てしまった。


 仕方ない。先生に言ってもう一枚もらおう。


「柊?」


 振り向くとビニール傘を差した黒崎くんがいた。


「おはよう」


「ん。…なんで立ち止まってんの」


「進路のプリント忘れちゃって」


「戻るの?」


「ううん、遅刻しちゃうもん」


 わたしたちは歩き出す。


 雨が弱まる気配はない。


「黒崎くんはどうするの、進路?」


「就職。特にやりたいこともないのに進学したって無駄だし」


「そっ、か」


「柊は。どうすんの?」


「わたしも就職、かな。いつまでもお世話になってられないし…。って言っても、就職してからもお世話になるんだけど…」


「…ふーん?」


 それからは、会話らしい会話がないまま学校に着いた。


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