豹変…?


 わたしはどうしていいかわからず、突っ立ったまま。悩みに悩んだ結果、頭を撫でてみる。一瞬だけ、彼はピクッと動いた。


 両親を亡くして泣いていた時、叔母が頭を撫でてくれていたことを思い出す。当時はまだわたしは小さく、叔母の手と優しさが大きく感じた記憶がある。それでわたしが安心できたように、田沼くんにも少しでも安心してもらいたい。そんなことを考えていると、コツンと彼はわたしの頭に自身の頭を乗せてきた。


「!?」


「柊さん、背ちっちぇーのな」


「え? あ、う、うん…」


 突然の出来事に、戸惑いを隠せない。


「身長なんぼ?」


「うーん…。確か155センチはあったと思う…」


「おチビちゃん」


「……」


「女の子はちっちゃい方がいいよ」


 少しだけ、震えていた声がはっきりしてきた気がする。


「田沼くん」


「ん?」


 名前を呼ぶと、頭を上げてくれたようで、わたしの頭上は軽くなる。


「…あっ」


 顔を上げると、思ったより近距離に田沼くんの顔。


「顔、赤くなってきてる」


「えっ!? だっ、だって…」


「だって、なに?」


 彼は楽しそうにニコニコしている。


「ち、近い、からっ」


「から?」


「っ、──!」


「ふっ、かわいー。純粋すぎんだろ、


「!?」


“柊さん” から “琴音” に呼び方が変わっている。態度と言い呼び方と言い、突然の変化に思考がついていかない。


「黒崎さんの前でもそうなの?」


「黒崎くんの?」


「そ」


「よくわからないけど、いつも通りだよ?」


「…意地悪し過ぎた」


 そう言って再びわたしの頭の上に頭を乗せる。


 小さなため息が聞こえた。


「田沼くん?」


「…わりい。なんか琴音見てたら、いじめたくなる」


「え? それってどういう」


 わたしの言葉に昼休み終了の鐘が重なった。


「さぁ? 教室戻ろーぜ!」


 彼は笑って階段を下りていく。


 泣いていたかと思えば、急に意地悪になって…。よくわからない人だ。


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