8時


「…いつも寂しい思いをさせてしまって、ごめんね」


 突然の謝罪に、わたしは驚く。


「琴音ちゃんがここに来てから、一緒にお買い物に行ったり、どこかへ遠出したり、一度もしてないわ。家に帰ってくることもほとんどない」


「気にしないでください。わたしは平気ですから…」


「気遣って無理しなくていいのよ?」


 わたしは笑ってみせる。


「本当に平気です。今は黒崎くんがいるし、それに、ようやくクラスで話せる人ができたんです」


「黒崎くんって、バディの?」


「はい。わたしが昇格できたのも、彼のおかげなんです」


「そうだったのね。琴音ちゃんはきっと、これからドンドン伸びるわ」


「頑張ります」


『8時のニュースです』


「!」


 不意に聞こえてきたアナウンス。テレビがついていたことを、すっかり忘れていた。


「時間、大丈夫?」


「ちょっと危ないです」


 慌ててごはんを食べる。その間に、叔母は通学カバンにお弁当と水筒を入れてくれた。


「ごちそうさまでした! お弁当ありがとうございます」


 食器を下げ、荷物を持って急いで家を出た。


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