誰かの為に


 月曜日の昼休み。バッグからお弁当箱を出して机に置くと、目の前に黒崎くんがいた。


「!!!」


「なに口パクパクさせて。エサ待ってる鯉なの?」


「ち…、ちがっ、急に黒崎くんが現れたから!」


「はいはい。早く、卵焼き」


「あ、うん。──どうぞ」


 お弁当箱を開け、箸と一緒に差し出す。


「…全部食べていいってこと?」


「だめだめ。指で掴んだら、汚れちゃうから…」


「なんだ」


「…もし良かったら、明日作るよ? 今日、お休みだし」


 黒崎くんは口をモグモグさせながら、目を丸くする。なんだか面白い。


「い、嫌なら、作らな」


「作って。アレルギーも嫌いなのもないから」


「うん!」


「じゃ、卵焼きありがと。ごちそうさま」


「お粗末さまでした」


 彼は教室を出ていった。


 自分の為ではなく、誰かの為に作る方が何倍も楽しい。


 昼休みは、お弁当をたべながら、明日のお弁当のことを考えて終了した。


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