笑い者?
後ろから声を掛けられて驚く。そして顔を見てさらに驚いた。わたしに声を掛けたのは、用事のある人物だったのだ。
わたしは勇気を振り絞る。
「あ、あのっ」
「うん」
「あの、えと…」
「うん」
「その…」
「? うん」
「……」
いざ言うとなると、どうも怖くて肝心の言葉が出てこない。
「…用件は?」
「えと…、そ、掃除、のことで…」
「うん」
「ぬ、抜けます。あのっ、どうしても学校終わったらすぐに行かなきゃいけないところがあってっ、だから、その…、ごめんなさい…」
「ぷっ」
「へ?」
「あはははははっ!!」
目の前の彼は急に笑い出した。
勇気を振り絞って言ったのに、大笑いされている。怒られるよりは良いけど、なんだか複雑だ。
「ひ、柊さんって面白いんだな!」
「わ…、笑わないでください…」
「悪い悪い。…俺が怖かった?」
「は、はい」
「だよなー。見た目こんなんだとそりゃ怖いし言いにくいよな」
うんうんと、ひとりで納得している。
「とりあえず、掃除は抜けていいよ。いつもちゃんとやってくれてるしな」
「あ、ありがとうございます」
「…クラス一緒なんだし、タメなんだし、敬語やめよーぜ。ま、慣れてからでいいけどさ!」
彼はニカッと笑った。
鐘が鳴る。5時間目の始まりだ。わたしたちは教室に入った。
…あの人の名前、なんだっけ。
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