驚きがふたつ


 協会に着き、わたしたちは第1会議室に入る。ここは、社員以外の、主にわたしたちのような学生の死神が使う部屋。わたしたちは報告書を書き始める。──ウトウトしながら。


「柊…、寝るな…」


「…ん、黒崎くん、こそ…」


 先ほどから繰り返されているこのやり取り。もう何度目だろうか。


 やっとのことで報告書を書き終えたわたしは、リストを確認しに行く。ついでに、個人ポストも確認する。


 会議室の壁には、1組ごと名前が書かれたポストと、個人ごとのポストが設置されているのだ。


「…?」


 個人用には、一通の封筒が入っていた。開けて中を見てみる。


「! く、黒崎くん!!」


「んぁ…」


「さ、採用通知! 入ってたの!」


「…良かったね。まぁ、よっぽどのことがない限りは不採用にならないらしいから」


「そうなんだけど…」


 わたしは一旦採用通知をポストに戻し、バディ用のポストを開ける。


「え…」


 リストを見て、わたしは固まった。


「…なに」


「……明日から冬休みだって知ってた?」


 明日は朝から仕事が入っている。


「当たり前でしょ」


「そ、そっか」


 忘れていたのは、わたしだけのようだ。


 とりあえず、リスト内容を確認する。今日は2件。時間と場所を見て、ルートを考える。20時と、22時。移動に時間は掛けていられない。


 ──カランッ


 後ろでなにかが落ちる音がした。わたしは振り向く。


「黒崎くん…?」


「……」


「黒崎くーん?」


「……」


 眠ってしまった様子。わたしはリストを戻し、彼の隣に座る。そして報告書と彼が持っていたペンを、自分の前にずらす。隣からは静かな寝息が聞こえてくる。


「ふわぁ…」


 早く報告書を書き上げて、黒崎くん起こして帰ろう。


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