プレゼント
店内には女性客がほとんどで、カップルが一組。
男性がひとりでいるのは、榊さんだけ。恥ずかしいのか、耳まで真っ赤になっている。
「贈り物ですか?」
「あっ、ハイ。妹の誕生日プレゼントを…」
「そうでしたか。それでは誕生石の───」
店員さんが、いくつか候補を出していく。
ネックレスにピアス、指輪に腕時計。どれもこれも、キラキラしていて綺麗だ。
ふいに榊さんと目が合った。
「あ、すいません、じっくり選びたいんで…」
「かしこまりました。なにかございましたら、お声掛けくださいませ」
店員さんはニコッと笑ってその場を離れると、榊さんはもう一度こちらを見る。
そして『手伝ってくれ』と、声に出さずに言った。
わたしは思わず、黒崎くんを見る。
「黒崎くん、どうしよう…?」
「…いいんじゃない。アイツが自然に振る舞えるのならな」
「……」
少し不安を感じたものの、わたしは榊さんの元へ向かう。
「自然に振舞ってくださいね」
榊さんは、携帯のメモ機能を開き、文字を打ち込む。
“ 助かるよ ”
「妹さんは、どんな方ですか?」
“ 19歳でおとなしくて、華奢で、清楚な感じ ”
ガラスケースの上に並べられているのは、どれも華奢なデザインのものばかり。
その中で、一際目を引くものがあった。
それは、ピンクゴールドのネックレス。
「榊さん、これなんかどうですか? シンプルですし、どの服装にも合いそうです」
「…うん。うん、うん」
「あとは腕時計なんかもいいと思います」
しばらくの沈黙の後。
「よし、すいません」
店員さんを呼んだ。
「お決まりになりましたか?」
「このネックレスをお願いします」
「かしこまりました。ありがとうございます」
店員さんはガラスケースの上に並べられたものを元の位置に戻し、ネックレスを持ってレジへ向かった。
わたしは榊さんの側を離れ、元の場所に戻る。
「良かったんじゃない」
「えっ?」
「…なんでもない」
黒崎くんはそっぽを向いてしまった。
榊さんはラッピングされたネックレスを受け取り、お店を出て行く。わたしたちもそれに続いて、お店を出た。
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