二章

微妙な変化


 月曜日、登校中に黒崎くんと会う。


「おはよう」


「あー、おはよ」


「今日、久しぶりのお休みだね」


「…そうだった。寝れる」


「黒崎くん、授業中寝てそうなイメージ」


「なにそれ。言っとくけど、僕は一度も居眠りなんてしたことない」


「えっ!!」


 思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて口を押さえる。黒崎くんが睨んでいる。


「急にでかい声出すのやめてくれる? 一緒にいて恥ずかしい」


「ご、ごめんなさい…。意外だったから…」


「はぁ…、全く…」


「…お詫びに卵焼きあげる」


「!!」


 一瞬にして雰囲気が輝く。ほんの少しだけ、嬉しそうな顔。


 黒崎くんの微妙な表情の変化が、見分けられるようになってきた。


「昼もらいに行く」


「待ってるね」


 可愛いと思いつつ、声に出すと貫通する勢いて睨まれそうで、心の内に留めておいた。


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