16歳⑶


時刻は20時38分。あと4分後だ。リストには事故死と書いてあった。


「あ、お母さん、もうすぐであっち青だよ!」


「あら、ラッキーだね」


すぐそこの交差点での事故だろう。あんなに見晴らしの良い交差点で事故が起きるとは到底考えられなかった。


刻一刻と、その時は近付いている。


信号が青に変わり、親子は当たり前に渡っていく。


「明日の体育でね、バレーのテストがあるの。あたし、1番取れる自信あるよ」


「そりゃあ小さい頃からやってるんだから、取れるよ」


“明日”という言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられる。あの子に“明日”はやってこない。


──ちりんっ


小さな鈴の音。


「あっ」


女の子は戻ってくる。


「ミヨ?」


わたしの心臓が、ドクドクと鳴り始める。


あぁ、見たくない。


「鍵落とし」


「ミヨっ!!」


一瞬の出来事。


猛スピードで走ってきたトラックによって、彼女は高く舞い上がり、そして地面に打ち付けられる。


お母さんの絶叫。急ブレーキの音。降りてきた運転手の慌てふためく姿。


そんな中、ミヨという名の女の子の魂が、わたしたちの前に現れる。それと同時に、冥土へ繋がる扉も現れた。



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