第115話 俺のアドバンテージが無くなる!?

 爺ちゃんとフレア3人で父さんや母さんの昔話を聞きながらあの後過ごした。


 印象深かったのは父さんは昔から天才肌で『型』をあまり覚えていなくてもスキルの組み合わせだけで滅茶苦茶強かった事と、母さんが想像以上に嫉妬深くて色目を使った父さんを何度も刺して治していた事ぐらいだろう。


 母さんとミレーユが被る……ミレーユも母さんの養子みたいな感じだから似ているのだろうか?


 俺の未来は鮮血に染まらなければいいなぁ……。


 そんな事を思いながら俺は既に鮮血に染まっているのだが……。


 ミレーユじゃない……爺ちゃんに滅多刺しされている。


 またもや訓練だ……。


 最近、訓練三昧で俺の心が死にそうだ……。


 バラムとシロガネが見物しているのは当然ながら、初代も『さすが俺の子孫だ! それなりに使いこなしてるじゃないか!』と俺へのアドバイスを忘れて感動している。


 スパルタだとは思ったけど、ここまでだとは正直思っていなかった。武器を使わなかったバラムより酷い……。


 もはや弱体化した今の状態では目に『集』を使っても【応援】での強化無しでは対応が全く出来ない……それ以前に地獄の筋肉痛でそれどころではない。


 俺は案山子だろう。


 そう、俺は何もする事が出来ない木人形だ。


「ほれ、回復出来るじゃろ? さっさと立ち上がれ」


 倒れる俺に無慈悲な言葉がかけられる。


「……『回復』……せめて、弱体化が終わってからじゃダメですかね?」


 俺は立ち上がり聞く。


「何を甘い事を言っておるか! 敵は待ってなどくれぬ! もっと神経を研ぎ澄まさぬか! フレアを守れんぞ!」


「──わかった──」


 フレアは必ず守らなければならない。弱音を吐いている場合じゃない。


 何より! フレアが目の前で見ている! 情けない姿は見せられん!


 俺は奥義『流星』の構えを取る。


 もう、防御が不可能な俺にはこれしかないだろう。


 全身痛いけど、我慢だ──


「爺ちゃん──行くぞっ!」


 俺はスキルを使い──全力で駆け出す。


「ふむ、アランの使っておった技か……だが──甘い」


 硬質化した剣先に同じ技を爺ちゃんは放ってくる。


 俺は一寸の狂いも無い、槍の突きに驚愕する。


 そして、俺の流星は弾かれてしまう。


 ボロ雑巾の様に地べたに這いつくばる俺。



「お爺ちゃん凄いのです!」


「うむうむ、爺ちゃんはまだまだ若い者には負けんぞ」


「フレアも出来るのです!?」


「安心せぃ。わしが強くしてやる。エルはそのまま高密度に魔力を練る練習をしとれ。さぁ、フレアよ! 爺ちゃんと訓練じゃ! そこで見ておる者もやる気があるなら来るのじゃ!」


 こっそりこちらを見守っていたメンバー達も訓練に参加し、爺ちゃんはフレアの顔見ながら意気揚々と教え始める。


 俺の元へはバラムとシロガネがやってくる。


「ボス……このままでは貴方は1番弱くなります」


 バラムは追い討ちをかける様に容赦ない言葉を俺に投げつける。


「……何故?」


「ボスの頼みの綱である型はある程度全員が習得するでしょう……つまり、貴方のアドバンテージは無くなるっ!」


 ──はっ!?


 確かに!


 強くなったのに、条件が同じになったら──また置いて行かれてしまう!?


 いや、まだだ!


 俺には【応援】がある!


「そのスキルで弱体化してるのにどうやってこの先乗り越えるのですか?」


 うぐっ……。


 だが、初代は俺が初代以上になれるって言ってた!


「……悪足掻きを……オーガストとは戦闘センスが違うんですよ。あの戦闘狂の変態ぐらい貪欲であれば良いでしょうが、今のボスには全てにおいて足りてません! さぁ、先輩……」


 人化する裸体のシロガネ。


「うむ。主よ、逆境は時に人を成長させるものだ。死の瀬戸際で発見する事もある──さぁ立つのだ!」


 それなんか前にも聞いたぞ!?


「ボス──ここで立てないとフレアお嬢様を守れませんよ?」


 ぐぬぬ、言わせておげば──


「──フレアは俺が守るんだっ!」


「では、開始──」


 立ち上がった俺はシロガネに一方的に殴られる展開になったのは言うまでも無いだろう。


 前世の漫画みたいに隠された実力が発揮される事も無く──


 死の瀬戸際で見たのは豪快に笑う父さんの走馬灯だった。

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