第11話 【応援】の使い方
「さぁ、これで大丈夫……」
【補助魔法】である身体強化魔法により、淡い光が2人を包み込む──
今回は【応援】と【補助魔法】の併用で使っている。
俺の【応援】での効果は──
レベル1は対象の身体強化
レベル2は対象の防御力強化
レベル3は対象の速度強化
レベル4は対象の物理・魔法攻撃力強化
レベル5は対象のスキル強化
レベル6は応援効果の対象増加
レベル1~5は各々倍率はおよそ1.5倍だ。
これらの併用ももちろん可能ではあるのだが──
俺が血反吐を吐くぐらい体に負担がかかる。今回のように少人数で大多数の敵を倒す場合は俺が足手纏いにならない為に【応援】の重ね掛けはしない事が多い。
なので今回は【補助魔法】と【応援】のレベル1の併用で身体能力を底上げしている。
身体強化魔法は倍率は約1.3倍。しかも俺の応援効果と掛け算式で上昇するから単純計算で1.95倍。つまりこれで約2倍の身体強化を行った事になる。
「久しぶりだけど……やはりエルのサポートはおかしいわね?」
軽くミレーユからディスられた気がするけど、笑顔だから違うだろう。
うん、きっとそうに違い無い!
「お兄ちゃんっ! 力が凄く溢れてくるのですっ! これならどんな敵でも瞬殺なのですっ!」
フレアは自信が漲っているようだ。
「あまり長い時間は難しいから早めに殲滅を頼むよ。援護中──俺はあまり動けないしね。さぁ、行っておいで……俺も後から向かうからさ……」
【応援】スキルはどれか一つを使用していても体が鉛のように重くなり動き辛くなるからな。
「「了解」」
2人は駆け出して行く──
俺は【鷹の目】【索敵】【気配察知】【危機察知】のスキルを併用して使う。
スキルの使いすぎで頭痛がするが仕方ない。少しでも自分の身を守らないとな……。
まずは──
状況を把握しよう。
【索敵】スキルにある気配はどんどん消えていっている……恐ろしい殲滅速度だ。
いったいどんな戦い方をしたらこんな事になるんだろうか?
【鷹の目】をミレーユとフレアのいる位置に合わせる。
「──『氷結』──」
「それそれそれそれそれ~」
……。
実況をしようと思う。
まず、ミレーユだが微笑を浮かべながら【氷魔法】の上位魔法である【氷結魔法】を使って近付くオーク共を凍らせ、片っ端から剣で首を刎ねて進んでいる。
久しぶりに戦うその姿は、まさしく【冷笑】の二つ名に相応しいだろう……。
光が氷に反射して幻想的な光景に見える……オークを除けばだけど……。
そして、フレアだが──【神速】で目にも止まらぬ速さで次々と惨殺している。憤死のオークが量産されていっている……。
しかも、目を瞑りながら口角を上げて斬り刻むその姿は……我が妹ながら、少し怖い……本当に見えてないのか? と思うぐらいスムーズに動いている。
というか──
初めての狩りにしては慣れすぎてないだろうか?
ちなみに【神速】は自身の身体能力に比例して速度が増していくユニークスキルだ。
俺のバフで2倍になっている事もあり、目で追うのがやっとだったりする。
ミレーユのサポートもあるので安心して見ていられる。
……まだ開始10分程度だというのに…… 既に数は半分ぐらいになっているぞ?
オークメイジやオークナイトなどの上位種も瞬殺している……。
うん、とても順調だ。俺の出番は来ないな!
出番が来ても、ちまちま倒す事しか出来ないけどな!
しかし、これ……連携もクソも無いな……。
仮にこの件が無くて、もっと数が少なかったとしても一瞬で終わりそうだ……2人とも強すぎる。
──残り……100を切ったか……。
──【索敵】に反応!?
フレアとミレーユの元に誰か近付いて来ているな……5人か……冒険者の可能性が高い。
【鷹の目】で確認すると──
カレンさんと他4人──
Aランクパーティ『紅』が揃っている。
そうだよな……こんな状況をギルドが放っておくわけがないか。
マッチョさんは元Sランク冒険者だし、普段は馬鹿っぽくてもやる時はやる人なんだろう。
そんな事を考えていると【索敵】に引っかかっていたオークの気配は消える。
──殲滅完了のようだ。
『紅』の活躍の場を奪った形にはなってしまったが、これで王都の危機は去った。
俺は【応援】の発動を止めて、ミレーユとフレアのいる場所まで近づいて行くと、どうやら既に『紅』のカレンさんと接触しているようだった。
「ミレーユさんっ!」
カレンさんはミレーユに話しかけている。
カレンさんってミレーユを知ってるのか? まぁ、ミレーユはSランクで有名人だし不思議ではないか……。
「カレン……久しぶりね? 大分強くなったみたいね? もしかして集落の殲滅依頼受けてたのかしら?」
ん? ミレーユも知ってる感じ? 2人とも知り合い同士の可能性が高そうだ。
「お久しぶりですっ! そうなんです。けど終わったみたいですね! 数を見る限り少しキツそうなので助かりました!」
カレンさんは周りを見ながらそう言うが、彼女なら多少は怪我をするかもしれないが、きっと討伐出来ただろう……強力なユニークスキル持ちだし。
何度か2人で組んで討伐してた時は、あまりの強さに『銀翼』を思い出せてくれたもんだ。
「そう、なら良かったわ」
ミレーユが話し終わるとフレアが次に反応する。
「カレンお姉ちゃんの声がする?」
ん? フレアも知ってるのか??
「フレアちゃんも久しぶりっ! 5年ぶりだよね!? 可愛くなったわね!」
なにこれ? フレアの事もカレンさん知ってるの?
「ありがとうなのです! お兄ちゃんも近くにいるのです!」
呼ばれてしまったようだ……。
フレアは俺の方向を向いて言っている。バレているみたいだ。
「えっ? エルもいるの?」
「いますよ?」
俺は近付きながら声をかける。
ミレーユとフレアが知っている人なんて『銀翼』繋がりしかない気がするが──
──俺には全く思い出せていないっ!
というか、カレンさんと数ヶ月前に会った時はそんな話を──
されたな……。
確か初めて街で会って──
「エルっ! 久しぶりっ!」
とカレンさんが言い。
「どちら様でしょうか?」
と俺が答えた気がする……。
きっと、俺が一方的に忘れているだけっぽいな……。
そして、未だに思い出せずにいる……。
そもそも、こんな赤い髪の可愛くて胸が大きい女の子なら、そうそう忘れる事もない気がするが──
赤い髪?
『銀翼』と赤い髪と言えば────元剣聖のブレッドだな。
まさか……ブレッドの娘?
そういえば……微かにブレッドが一回連れてきた記憶があるな……。
あの時確か……会った瞬間に勝負しようと言われて一方的にボコられた後は意識が無かったらしいから顔とか覚えてない……。
うん、俺悪くないな。
「エルっ!」
カレンさんが名前を呼んでくれる。
「この間ぶりです、カレンさん。ちなみに俺も今思い出しましたよ……遅くなりましたが、お久しぶりです。と言っても無慈悲にボコられた記憶しかありませんが……」
俺は苦笑しながら言う。
「思い出してくれたのね! さぁ、結婚しましょう!」
なんでやねん……。
「……」
ミレーユさんや……その射殺すような目を止めてほしいです。
本当に何でこんな流れになってるのか俺が知りたいぐらいだ……。
「約束したじゃない……決闘した時に……」
全くそんな事は身に覚えがないんだが……。
さて、ボコられる前を深く思い出そうと思う……。
え〜っと、確か──
「初めまして、カレンですっ!」
「初めまして、エルです」
うんうん、ここまでは普通の自己紹介だな。この時はカレンさんは今みたいに胸は大きくなかったな。
「……一目惚れしました!」
「えっ?」
ん? 何か怪しい記憶が蘇って来たぞ?
「エル──貴方に決闘を申し込みます! 私が勝てば、お嫁さんにして貰います! では──開始っ!」
「えっ!? ちょっ、断る──!?」
──うん、確かそんな流れだったはずだ。
俺は一応断っているぞ?
「カレンさん、それ確か一方的に言い放ってましたよね? 俺はあの時断ってましたよ? ミレーユも覚えてるだろ?」
「そうね。確かにエルは断っていたわ。その後一方的にやられてたけどね?」
「ねっ?」
俺は同意を得れたので自信満々に答える。
「……そんな……──なら今すぐ決闘よっ! 私の婿になりなさいっ!」
「いや──「「「カレン」」」──?」
俺が断ろうとすると『紅』のメンバーがカレンを呼び止める。
うん、止めてくれると助かる。Aランク冒険者と決闘なんて死ぬ未来しか見えないからな!
もし、決闘になったら代理を頼むっ!
もちろんミレーユにだっ!
「カレン正気か!?」
「その子って確か『銀翼』のアラン様の息子よね?」
「落ちこぼれで有名な子だろ?」
「そんな人より、もっと良い人いるわよ?」
『紅』メンバーから散々な言われようだな……まぁ周りからはそう思われているし、特に否定する所もないんだけど──
せめて妹のいない時に言ってほしいな。
「お前らはエルの凄さがわかってないのか!?」
カレンさんはどうやら俺の力に気付いているようだ。
……そういえば『紅』との臨時パーティ組んだの一回だけだったな。
周りはあまり、俺の事良く思ってないみたいだな。だからよく個人で狩りに行こうと誘ってくれていたんだろう。
まぁ、そこまで俺に拘る必要も無いと思うのでそのまま諦めてくれると助かるかな。
うん、俺は思い出せて満足だ。
「顔だけは良いけど、弱いのよ?」
「そうよ! 男は強くないとダメよ!」
「それにカレンには低ランクのこいつより、高ランクの人の方が似合う!」
「こんな悪い噂しかない男はやめときなさい!」
カレンさん以外の『紅』のメンバーの追い討ちが止まることを知らない。
……もう少しオブラートに包んで言ってくれないだろうか?
ミレーユは無表情になってるし、フレアも普段は見せないような表情をしている。
誰か……この状況を打破出来る人はいないだろうか?
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