第10話 強さの確認(自分では無い)

 野営セットも買えたし(正確には買ってはいないが)、今日は久しぶりにミレーユとの連携確認とフレアがどこまで戦えるか調べないとだな。


「これから、装備を整えて常時依頼でもやろうと思う。2人と連携の練習もしないとだしね。特にフレアは初めてだろうし、命を刈り取る事に慣れてもらおう」


 常時依頼とは繁殖しやすい魔物を増えすぎない為に討伐する為の依頼で、ギルドにわざわざ受注しなくてもお金が貰える依頼の事だ。


 フレアは魔物なんて討伐した事がない。これから旅をするのなら慣れていかないとダメだ。


 ここはお兄ちゃんの凄さを見せてやりたいものだ。


「そうね。楽しみだわ」


「狩りなのです~~」


 2人とも賛成してくれたようで一安心。



 俺達は準備を整えて王都の外に出る。


 王都の周りにはあまり強い敵はいない。


 高ランク冒険者は強敵を討伐してくれているし、魔物による襲撃があってからは特に騎士団と中堅以下の冒険者が魔物を狩るようにしているからだ。


 その為、王都の周りは弱い魔物が比較的多い。


 俺とフレアにとっては丁度いい練習になるだろう。ミレーユには物足りないかもしれないが……。


 俺はスキル【索敵Lv10】を使う。

 何気にレベルは最大だ。常に敵と遭遇しないように使っていた賜物だ。


 レベル10だと最大で半径10キロ程探知出来る。


 正直に言うと、そんなに探知出来ても情報量が多すぎて頭痛がするのでいつもは範囲を狭めている。


「あっちにオークが5匹いる」


 距離は200m。オークとは豚顔の二足歩行の魔物で討伐ランクはDだ。


 もちろん俺1人なら逃げる。危険は避けたいからね。痛いの嫌だし……。


「お兄ちゃん凄いのですっ! フレアにはわからないのです!」


 フレアは敵を発見しただけで喜んでくれている。その笑顔だけでお兄ちゃんは調子に乗りそうだ。


「それで、どうするのかしら?」


 ミレーユは俺に聞く。


「……まず、フレアがどこまで戦えるか見たい。フレア出来るか?」


「任せるのですっ! 瞬殺するのですっ!」


 剣を抜いて準備万端のフレアは気合い十分だ。


 ちなみに剣は父さんのお古があったのでそれを渡している。


「……無理はダメだそ?」


 やはり、可愛い妹に戦わせるのは心配だ。


 もしもの時の為に直ぐに助けれるようにしなければ!


 俺は気合いを入れる。


 すると、オークは目視出来る距離まで来る。


「よし、フレア──って、もういない!?」


 俺が掛け声をすると同時に駆け出すフレア。


 移動速度が速すぎる!?


「「「ぶっひ……」」」


 断末魔と共にオーク5匹は一瞬で首を刎ねられていた。


「「……」」


 俺とミレーユは言葉を失う。


 コロコロとオークの首が一つ転がり俺の目の前に来る。


 その死に顔は酷く驚愕しているような顔をしている。


 俺がオークの死ぬ寸前の心を代弁しよう。


『馬鹿なっ!? 俺様が小娘如きにやられるとは!?』


 きっとそう思っていたはずだ。それぐらい驚愕の表情をしている気がする……憤死しているようにも見えるな……。


「お兄ちゃんやったのですっ!」


 満面の笑みで俺に手を振るフレア……その姿は血飛沫もかからず、汚れも無く、戦闘があったのかわからないぐらいだ。


 まさかここまで強いとは……。

 フレア……やっぱり余裕でお兄ちゃんより強いぞ?


「……うんうん、フレアは凄いぞ! さすが俺の妹だっ! ただ、これからは俺の指示に従ってね?」


「わかったのです!」


 素直で良かった。

 ミレーユも笑っている。


 しかし、これ俺が1番弱いぞ? いや、まぁ試験でわかっていたけど……お兄ちゃんとしての威厳が皆無なんだが……。


 とりあえず、他に敵がいないか【索敵】スキルの効果範囲を広める──


 ……これは──


「ミレーユ、フレア、少し離れた所に魔物の集落っぽい物がある……」


「へぇ……フレアちゃんがいても問題ないの?」


 ミレーユが確認を俺にする。集落討伐の危険度は高いからな……。


「……ミレーユがいれば問題ないだろうな……ミレーユは俺の立ち回りは知っているだろ?」


 俺の立ち回りと言っても援護なんだけどね。


「わかったわ。じゃあ向かいましょう。危なくなったら助けるから安心して」


 Sランクがいると安心出来るな。俺は守られる気満々だ。


「デストロ~イなのです!」


 フレアの将来が若干不安ではあるが、問題なさそうだ。


 だが、ミレーユに確認しておかなければ……。


「ミレーユ……」


 俺は小声でミレーユに話しかける。


「どうしたの?」


「おそらく──魔物の氾濫の可能性が高い……数は約1000……行けるか?」


「ふふっ、それぐらい問題無いわ」


 微笑みながら俺に答えるミレーユにホッとする。


「そうか。なら俺は全力でサポートするよ」


 本当は……全然行きたくないけどな!


 そもそも、王都周辺は狩まくってるんじゃないのかよ!?


 前回の魔物の襲撃に比べたら全然マシだとは言え……現在、王都にいる高ランク冒険者はAランクパーティの『紅』のみ……騎士団も前回の氾濫で疲弊している……こんな状態の王都に来られたらたまったもんじゃない。


 けど────父さん達が守った王都を、そして思い出の詰まった居場所を守りたい。


 俺はそんな思いを胸に歩き出す。




「さぁ、着いたぞ……まずは俺が偵察する」


 2人は頷く。


 スキル【鷹の目】を発動する。これは離れた場所を確認出来る便利なスキルだ。


 俺の視界は空から見た状態に切り替える──


 ……やはり多いな。


 オークの数が1000は超えている……それに上位個体もかなりいる。


 オークキングは今の所はいない。

 やはり、これは氾濫の一歩手前だろう。キング種が生まれる前に討伐しなければならない。


 キングとつく名前の魔物は全てが討伐ランクSになる。それだけ驚異度が一気に上がる。


 今回はオーク種……オークキングがいる場合は俺達の手には余る可能性がある。


「数は1000を超えている。氾濫一歩手前だ……ここで殲滅しておかなければ王都が危ない」


 2人は神妙に頷く。


 フレアはなんとなく雰囲気に合わせてくれている気がする。


「だが、フレアはまだ冒険者になったばかりだ。ミレーユもいるし、軽い気持ちで来たが……一旦引き返すのも一つの方法だと思う」


 さすがによく考えると、フレアには無理があるかもしれない。


「お兄ちゃん……フレアはお父さん達が守った王都を救いたいのですっ! フレアは戦えるのです!」


 フレアの気持ちが俺と同じな事に嬉しさが込み上げる。


 だが、危険な事に変わりはない。


「……しかし……──「エル」──ミレーユどうした?」


 ミレーユが俺の名前を呼ぶ。


「私がいるのよ? キング種はいないんでしょう? なら問題ないわ」


「わかった……無理だと判断したら即離脱するからな?」


 2人は再度頷く。


 これ以上は何を言っても無駄だろう。


 俺は覚悟を決める。


「2人に補助魔法をかける……」


 俺は2人に触れて──


 身体強化魔法を使うと同時に【応援】を発動する──

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