第37話 俺の攻撃魔法──

 凄まじい衝撃波が俺を現在進行形で襲っている──


 俺が思っている事は──


 こんなもん耐えれるか! だ。


 色んな【耐性】スキルを持ってるのに身体中が痛いぞ!?


 それに俺の体は瘴気に侵され始めている。


『天使の息吹』や『聖結界』では相殺出来ていない……。


 あー痛い……だが、これならなんとか生き残れそうだな……。


『広域聖結界』で徐々に周りの瘴気も浄化しているし、これなら皆との約束も守れるかな?


 ──!?


【闇魔法】の杭が襲って来る。


「──痛っ……マジかよ……」


 紙一重で避けるが半身に傷を負う。


 継続回復している為、直ぐに傷は修復される。


 魔法を放って来た方向を見ると──


 異形の化け物がいた。


「オマエダケハカナラズコロス……」


 こいつ、さっきの奴だよな?


 既に人の形ですらないぞ?


 第二形態とか前世での漫画だけにしてくれないかな!?


 俺にはもう余力も、戦闘で使えるアイテムも尽きたんだが……一応護身用に作っている武器はある……だが、こいつに効果は無いだろう。


 ──死んだな……俺……。


「ぐっ──」


 異形の化け物に殴り飛ばされ、空中を舞う──


「シネ」


 空中に放り出されている俺の真上に異形の化け物が現れ──


 そのまま腹部を殴り、地面に叩きつけられる。


 成す術を持たない俺はやられるがままだ。


 即死はしていないから『天使の息吹』の効果で回復はしている。


【痛覚耐性】も使ってはいるが痛いものは痛い。


 殴られ続けて意識が遠のいていく……。


 ……せめて……この瘴気が浄化し終わるまでは……耐えなければ……。


 体を動かせ……まだいける……いける──はずだ……。


 俺は──


 英雄アラン、元聖女キャロルの息子──


 まだまだいけるっ!


 俺が使える攻撃スキルと攻撃魔法スキルは無い……だが攻撃に応用は出来る──


 それが【刻印魔法】──


 そして【】だ──


 俺は異形の化け物の殴る手を掴む──



 そして、一気に残った魔力を流し込み──



『回復』する。



 その瞬間、異形の化け物の腕は破裂する──



 化け物は一度、俺から離れて睨みつけて来る。



 ははっ、ざまぁみやがれ……俺のは中々だろ?


 前世の記憶でラノベにあった──昔試していたら出来た。


 接近戦が出来ない俺には使う機会がほとんど無いが──


 これぐらいは出来る。



 さて……。


 やっと……空中の瘴気もほとんど浄化出来ているみたいだ。


 空気が澄んできている。


 これで俺が死んでも問題ない……。


 さぁ本当に魔力も枯渇した……。


『広域聖結界』と『天使の息吹』の発動が止まり、体は動かなくなる。


 もう十分だろう……。


 皆──


 ごめん……約束守れそうもないや……。



「うぐっ……」


【闇魔法】の杭が複数俺の体に刺さり、地面に磔にされる。


 俺の真正面には青い空を背景に巨大な漆黒の杭が形成され始める。



 これで最後か──


 こいつを倒せなかったのが心残りだが──


 俺は十分ベストを尽くせた。


 後は俺の仲間──


 『白銀の誓い』がいつか倒してくれる事を祈る。最後の最後で人頼みなのが俺らしい……。



 眼前に迫る巨大な杭──




 ウオオォォォォォォンッ



 獣の雄叫びと共に杭は破壊され、俺の前に大きな影が現れる。



『主……』


「その声はシロ……ガネか? なんか……でかいな?」


 微かに見える視界には可愛い姿のシロガネはなく──


 大きく凛々しい狼の姿があった。


『無茶をしおって……後は我に任せるが良い──』


 シロガネは俺を口で咥えてそっと背中に乗せる。


「あぁ……来てくれて……ありがとうな?」


『主の飯──ちゃんと食わせるのだぞ?』


 優しく俺に語りかけて来るシロガネ。


 食い気は相変わらずだな……。


 だけど──


【魂の盟約】も無いのに……もう俺とは関係無いのに──


 ここに来てくれた事がとても嬉しい……。



「あぁ、ちゃんと食わせてやるよ。俺の特製オムライスをな?」


 この安心感と嬉しさで包み込んでくれる今の気持ちは料理で例えるとなんとなく、オムライスが思い付いた。



『ふむ、楽しみにしておるぞ? とりあえず──あやつを殺すか……今であれば弱体化の結界もないしな……『豪雷』──』


 轟音と共に太い雷が異形の化け物に直撃し、沈黙する──


【雷魔法】──


 それは特殊な魔法の一つだ。上位魔法にも引けをとらない威力を持っている。


 さすがは災害級でも伝説クラスのフェンリルだな。


 しかし、まだ目標は死んではいない。


「……シロガネ──」


『わかっておる……相変わらずしぶとい……──『渦雷うずらい』──』


 辺りに暴風が巻き起こり竜巻を作り出す──


 下から極太の雷打ち上げられ──


 異形の化け物は上空に放り出される。



『──【一撃入魂】──『雷切』──』


 そこに待ってましたと言わんばかりにシロガネは紫電を纏わせてた爪を一気に振り下ろす──


 勢いよく下に叩きつけられ、轟音と共に地面はクレーターを作り、消炭になる……。



 俺達は地面に着地し、様子を見る。



 異形の化け物はもう動かない。


 

 しばらくすると、灰に変わり霧散していく……。



「討伐完了だな……」



 どうなる事かと思ったけど、なんとかなったな……。


 シロガネを見ると、また小さい狼になっている。しばらくは副作用でこのままだろう。



『うむ、遠くから見ておったが──主は弱くなかったな……』


「見てたのかよ……なら早く助けてくれよな……というか──もう主じゃないんだし、名前で呼んでくれたらいいぞ?」


『主の結界は我も弱体化する故、切れるまで待っておったのだ……。主は主であろう? 我はまだ主の所におる……人間の身でありながら興味深い……面白そうだ』


「あれ、お前にも効果あるんだな……。そっか……なら──今度は友達になろう。俺って実はあんまり友達いないんだよね?」


『寂しい奴だな……可哀想故──【魂の盟約】を許そう』


「うるさいっ! 友達になるのに【魂の盟約】はいらないだろ?」


『だが──主はそのままだと死ぬぞ?』


「──はっ?」


俺の時が止まる──

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