第38話 相棒

 シロガネ曰く──


 俺の体は既に瘴気に侵されており、手遅れの状態らしい……。


 俺は【叡智】に従った結果、なんとか生き残る事が出来た……シロガネが来なかったら死んでたけど……。


 誘導された感がある……つまり──


【叡智】はこうなる事もしていたはずだ。


 ここから先もきっと何か助かる為の手段があると願い──【叡智】を使う。




[お疲れ様です。貴方のお陰で危機は去りました。しかし、貴方は死にそうです]



 うん、知ってる。シロガネに教えてもらったしね。


 何か助かる方法無いかな?


 俺、指示通りにしたんだから貸し一つだよね?


[……]


 いや、黙るなよ!? 何か文字出せよ!?


 というか、俺死ぬの!?


[……一つだけ方法があります]


 ふむふむ、どうするの?


[その野良犬の言う通りにしなさい。そうすれば助かります]


 野良犬とはシロガネの事だろう……つまり──


【魂の盟約】をしろと?


[そうです。【魂の盟約】は本来魂を繋ぎ、生命力など諸々を共有します。野良犬の生命力であれば今は助かるでしょう。それにも共有出来ますので助けになるはずです]


 おー! 助かるなら良かった……スキル共有も出来るのか!


【魂の盟約】凄いなっ!


 前回はシロガネが抵抗したから出来なかったんだな!


 ありがたい情報ありがとうっ! 


[貸し一つですね? これからもよろしくね? じゃーねー、てへぺろ]


 ……とりあえず、凄くぶん殴りたい!


 何が『てへぺろ』だよ! 文字でやられても可愛くもなんともないしっ!


 何より男か女の子かわからないんだけど!?


『主はさっきから空中で何故素振りをしておる?』


 なけなしの体力を使い、目の前の文字を殴っていたらシロガネに突っ込まれてしまった……。


「どうやら、俺が助かるには【魂の盟約】しかないみたいだな……」


『そう言っておるだろうが……早くせんと死ぬぞ?』


「それは嫌だ。すまないが、頼む──【魂の盟約】──」


 俺は直ぐに【魂の盟約】を使用する。


 真紅の光が俺達を繋ぐ──


 1回目の時と違う。


 これはシロガネが抵抗していないからか?


 前回は死ぬのだけ共有してるっぽい事をシロガネが言っていたからな。


 瘴気の侵食も無くなっていく。


 力が溢れてくる……。


 これで生き残れる……ありがとうシロガネ。



「シロガネ──これからよろしくな?」


『うむ……早く帰って飯をくれ』


「ふふっ、わかったよ……とりあえず試したい事があるからやっていいか?」


『ふむ、大方──我のスキルを使いたいのだろう? 許す』


 バレてた? というか共有の事知ってたのか。


 俺はにやにやが止まらない。


 なんたって攻撃魔法が使えるとわくわくしている。


 人では未だに使ったのを見た事がない【雷魔法】が使えるとか浪漫だろ!


 俺は魔力を込めて──


 手を空にかざす。


 確か『落雷』ってのがあったはずだ──良し!


 使ってみよう!


「──『落雷』──」


 シーン


 俺の言葉だけが木霊する……。


『……』


 お前も黙るなよっ!


 こうなるってわかってたさっ!


 だけど少し期待もしてたんだよっ!


【応援】スキル……。


 お前はある意味最強だよ……なんたって上位スキルで禁忌てある【魂の盟約】の効果も掻き消してくれるんだからな……。


「……シロガネ……これは予想の範囲内だ……俺は少し特殊で生まれながら攻撃スキルと攻撃魔法が使えないんだ……」


『まぁ、なんだ……その内良い事あるさ……』


 やめろっ! 同情するなっ!


 そんな姿で言われると泣きたくなるっ!


 ぐぬぬ……。


 シロガネに【鑑定】を使い、何か使えそうなスキルが無いか見るか……発動──


 [ぷぷっ、哀れなり]


 うっさいっ! 使ってないのに何で【叡智】が発動するんだよ!?


 もう一度【鑑定】っ!


 今度は普通に発動する。羅列するスキルを見て行く──


 ──ふむふむ。


 これだっ! これなら発動するはずっ!



「いや、ちゃんとスキルは共有出来ているはずだ! 見てろよ──【天駆】──」


 俺は空に向けて足を蹴る──


『おお?』


 シロガネも感嘆の声をあげる。



 俺は空中を駆け抜けている。


 うん、移動スキルなら問題ないな。


「ほらっ! シロガネやったぞ! ちゃんと使えるぞ?」


『確かに……人の身でそれ使えるとは……』


 俺は地面に着地する。


「これ便利だな」


 逃げる時に。


『うむ、逃げる手段が増えたな』


 確かにそうなんだが、もう少しオブラートに包んでほしいぞ?


「敵からはお前が守ってくれよ? なぁ、相棒?」


『ふんっ、飯さえ食わせてくれればな』


 そっぽを向いて答えるシロガネは照れているようだ。


「ふふ、わかったよ。さぁ戻ろう」


【魂の盟約】は使った側が優位だから対等とは言えないが、俺はシロガネと対等だと思っている。


 今回の一件で相棒が出来たな……。


[えへっ、相棒です。よろしくね?]


 今も発動もしていないのに目の前に文字が出る。


【叡智】だ……。


 いや、お前なんなの?!



 はぁ……とりあえず、お前にも感謝はしているさ……けど、巻き込まれた感が半端ないけどな……。


 まぁ、これからもよろしく頼みたい……俺を守って欲しい。1人だと今回は何回死んだかわからないからな……仲間は大切だな……。


 2度と危ない事に首を突っ込みたく無いな……特に1人では……。


 しかし……俺のご飯はヤバいな……契約とか関係無しにこんなに懐いてくれるとは……。


 俺は苦笑しながらシロガネと共に空を駆け抜けて行く──

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