第92話 眷属が出来た!(望んでないけど!)

 理性との戦いは俺の勝利で終わった……全く寝れなかったけど……。


 フレアと外野がいなければ完全敗北していた。


 外野とは初代と【叡智】を含めた全員だ。


 フレアが寝た後はミレーユの悩殺ポーズで理性が飛びかけたが──


 『子孫は見られながらするのが良いのか? 童貞だよな? 俺なら初めては2人きりが良いけどな』


 そんな初代の言葉に現実に引き戻された。


 続いて【叡智】が──


[パターン青っ! 覗きですっ!]


 と前世のアニメみたいな事を表示する。


 そこで俺は察知系のスキルを使用する。


 すると──


 なんという事でしょう……仲間のみならず、メイドや執事までが全員集合しているではありませんか!


 ──俺は思った……。


「勘弁して下さい」


 ──と。


 ミレーユは俺を悩殺する為にあらゆるポーズや声をかけるの必死で気付かない……。


 ここからが本当の戦いだった……。


 内容は割合するが……危うく理性が飛びそうだったとだけ言っておく。



 そういうわけで、フレアを除くが寝不足で次の日を迎える。


 今は朝食を済ませて、皆でゴウキやサガンの利権に関して話し合っている。


 カジノの時と変わらず特に進展はしていない。無理矢理奴隷にされた人を解放したぐらいだろう。


 一休みしようかと思っていると──


 トントンっと扉がノックされる。


「ボス、茶菓子です」


 執事さんだった。


「入ってくれ」


 見た目は黒髪で片眼鏡を付けている真面目そうなイケメンの執事さんだ。


 この執事さん、実はここの屋敷を全て取り仕切っている凄い人で名をセバスと言う。


 名前を聞いた時に俺は思った……。


 前世のラノベとかでも有能な執事が出てくるとと名乗る人多くない? って……。


 とりあえず、名前の事はこの際どうでもいい。


 この人がいなければ俺達は経営などは無理だっただろう。


 ハイパースペックのセバスさんのお陰で俺達は仕事が最低限になっている。


 もうこの人に健全な運営をするように頼んで全て丸投げでも良い気がする。


 そして、俺は旅に出たい。


「セバス──「お断りします」──……」


「まだ何も言ってないよ?」


「どうせ、ボスと言うのを止めろとか旅に出るから後任せたとか言うつもりでしょう?」


 大当たりだ!


 凄いぞセバス!


「そこをなんとか頼む! もうぶっちゃけると面倒く──いや、俺には果たさなければならない事があるんだ!」


「今、面倒臭いって言おうとしましたね?」


 うん、だって面倒臭いんだもん……経営というのは正直面倒臭い。


 俺には全く合わない!


 なんとか任せたい……【叡智】さん、何か交渉材料を下さい!


[その人は貴方と【契約魔法】で繋がれています]


 良し、解放を条件に任せよう! きっとセリアさんと同じでこの人も奴隷なのだろう。


「いや、気のせいだよ? 面倒かけるねって言おうとしたんだ! そうそう、奴隷紋を解除するから後の事任せるよ!」


「……あぁ、は格好良いと思ってそのままにしていますのでお気になさらず。私は余生をおもしろおかしく生きたいだけですので」


 ん?


 価値観おかしくね?


 何か引っかかる……。


 困った時の再度──【叡智】さんだ!


[この人は貴方が寝ている間に眷属になっています。そして【契約魔法】による効果はありません。下僕が増えて良かったですね!]


 意味がわかんねーよ!


 なんだよ眷属って! 奴隷契約じゃなかったのかよ! そんなもん解除だ、解除!


 しかも効果の無い契約なんて誰得だよ!



『──思い出した!』


 何が!?


『そこのセバスって奴──昔俺がボコった奴だわ』


 はぁぁぁぁぁっ!?


 どゆこと!?


『そいつはだな。名前はだったはずだそ? 何でこんな所にいるんだ?』


 俺は即座に【鑑定】を使うが表示は一般的なスキルとセバスという名前だけしかされなかった。


 初代、それ人違いじゃね?


『子孫は【看破】のスキルレベルが低かったな……【詐称】された内容を見抜けないのも仕方ないな……』


 なにそれ……イカサマされてる気分だわ!


 ってか、何でそんな大物がいるのか俺が知りたいわっ!


 悪魔とか完全に神話級の存在じゃないか! そら【契約魔法】が効果ないわけだ!


 何でこんな所にそんな神話級の危険人物がいるんだよ!


 し・か・も! バラムって言ったら──


 初代が戦った中でも上位の強敵じゃないか!


 そのバラムは目の前で自分が入れたお茶を入れて飲んでいるが……。


 前世でもソロモン72柱でバラムっていたよな?


 確かその知識では3つ首の悪魔。策略に長けた悪魔で──


 しかも階級が王だったはず……。


「バラムさん……余生は地獄に帰ってしてくれませんかね?」


 俺の言葉に全員が臨戦態勢に入る。


「おやおや? さすがオーガストの末裔ですね。バレてましたか……しかし私にも帰れない理由があるのです」


 帰れない理由?


「……理由を聞いても?」


「いやはや、浮気しようとしてバレましてね? 娘に殺される所──こちらに避難してきたのです。今帰れば殺されてしまう。まぁ復活するんですがね」


「いや、それはバラムさんが悪いだろ。復活するなら謝って来たら?」


「私は死んでも復活しますが、復活した瞬間に殺される未来しか見えないんですよね? だって愛娘に攻撃なんて出来ませんし? それにそんな地獄を飽きるまでやられるなんて嫌じゃないですか?」


 そりゃー嫌だけど、自業自得だよね?


 というか……バラムさんの娘さんめちゃ怖いな……。


 女性陣はバラムさんの娘さんの味方のようでゴミカスを見るような視線を向けている。


 何より、これ以上面倒事は嫌なのでお帰り頂きたい。


「いや、飽きられるまで死んできたら良いと思いますよ? ここで初代の時のような戦闘とかされたらたまらないんで……帰ってくれません?」


「──そう言うと思って、既に眷属契約をしております」


「──『解除』──これで問題無いですよね?」


 俺は【契約魔法】を解除する。


「──『契約』──「いや、無駄なので──『解除』──」────────」


 そんな応酬が続く。


 俺は本気で嫌なので全力で『解除』する。


 向こうも帰りたくないのだろう。必死に『契約』を続けてくる。というか眷属契約って向こうからも出来る事実にびっくりなんだけど!?


「……ボス──」


「諦めろ……後、ボスって言うな!」


「私はこの世界で今は暴れるつもりはありません。娘から逃げれたらそれで良いのです。ボスが旅に出るなら私としても好都合。なんなら【誓約】を使っても良いです。そうすれば安心出来るでしょう?」


 急に真面目にそう告げるバラムさん。


「……ダメだ信じられん」


「なら──ここで暴れます」


 急に物理になった!? さっきの言葉撤回!?


 というか──初代も苦戦してたような相手だ……戦闘になったら俺ら含めて街が滅ぶんじゃなかろうか?


「……わかった──なら俺と【魂の盟約】をするなら許可する……」


 こんな危険人物放置するのはもっとダメな気がする……俺がなんとかするしかない……。


「おぉ! さすがボスっ! 信じてましたよ! しかも【魂の盟約】が使えるとは! 全然構いませんとも、娘から逃げれるなら奴隷でもなんでも構いません! よろしくお願いします」


 そこまで娘さんから逃げたいの!?


「なら──【魂の盟約】を使う──」


 紅い粒子はバラムさんと俺に入ってくる。


「では、私の全てはボスの物です! 私は執事ですので呼び捨てでお願いします」


 どこかで聞いたような台詞だな……。


「わかったバラム。頼むから許可無しで暴れないでね? 頼むよ? 後、ボス言うなっ!」


「了解ボスっ! そうそう、お客様が隣の部屋でお待ちですので行って下さい。危険はありませんのでお一人で行って大丈夫です」


 直す気ないだろ! しかも執事なのに用事忘れるなよ! あの万能感はどこにいったんだ!?


 嬉しそうに足早に去って行くバラム──


『なんかあいつ丸くなったな……俺と会った時は世界滅ぼす気満々だったのにな……』


[こうして新たな下僕が誕生した……]


 いや、本当勘弁して下さい……。

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