五章 兄妹の為に応援する──

第91話 添い寝は良い物なのです!

 あれから数日が経過した……。


 親友を失ったショックが大き過ぎて、全てにおいてやる気が出ない俺を皆が励ましてくれた。


 本当、情けない俺には勿体無い仲間だと思う。


 先程、セリアさんにも謝罪をした。


 手遅れとわかっていてくれていても俺の気が済まなかったからだ。


 セリアさんは気にしなくて良いと言ってくれても、やはり俺は気になってしまう。


 だから面と向かって約束した。


「いつか必ず初代の墓にこのネックレスを届けます」


 と──


 するとセリアさんは微笑んでくれた。


 ただ、現状では初代の墓に辿り着くのは誰か欠けると【叡智】に表示されてしまった。


 ならば──


 辿り着けるように皆で強くなろうと思う。


 それまではセリアさんから預かったネックレスは俺が身に付けて旅をしたいと思う。


 いつか初代の墓に辿り着くまで一緒に。


 今回の事が無ければノアもパーティに入ってもらって一緒に旅をしたかった……しかし、もう叶わぬ願いだ……。


 だからこそ──


 ノアから受け継いだスキル、ネックレスと一緒に旅をしたい──


 そうセリアさんに伝えると「ありがとう。きっとその方がノアも喜ぶ」と言われた。


 セリアさんには残留思念の事は話していないが、スキルの話はしている。


 もしかしたら──まだ残留思念が残っているかもしれない。


 ノアが面白おかしく旅を見てくれると願いたいと思う。


『お前ならいつか1人でも俺の墓に来れるさ』


 そんな初代の言葉が頼もしく思えた。



 皆も初代の墓には興味津々のようで行きたいと言っていた。


 フレアにも連れて行ってあげたい──



 そう思っている所でセリアさんが現在、話をぶっ込んで来ている。


「ノアの為に失った右手の代わりには私がなる」


 ぶっちゃけ唐突過ぎて意味がわからない……。


「あー、セリアさん、俺の右手は気にしなくて大丈夫です」


【再生】スキルは傷とかを魔力を使って治すスキルだったりする。正確にはスキルレベルが上がれば一応部位欠損も治るのだが、レベルは1だ。


 だから失った右腕の代わりになりたいと思っているのだろう。


 ノアを殺させてしまった事も気にしているのかもしれない。


 何より腕は自分で直ぐに治せる。


「いや、それでは夜──利き腕が無いから困るだろ? 男の子はそうだとノアが言っていた。それに私はだ。夜伽ぐらい任せろ──「『睡眠』」──」


 ……色々とツッコミたい事があるが、俺は【睡眠魔法】を使用して眠らせる。


 まず、今はだ。


 この話をするには少し早すぎる。


 何より天使のようなフレアに聞かせたくない。というか既に聞かれてしまった……隣で「夜伽ってなんなのです?」と聞いている。


 周りも気不味そうな表情をしている。


 これは早々になんとかしなければならない──とりあえずセリアさんには退場してもらおう。


「メイドさん……ちょっとセリアさんは疲れているようだ……寝室まで案内してくれないかな?」


「ボスっ、了解です!」


 俺は外で待機しているメイドさんを呼び出す。


 ぼちぼち、その『ボス』ってのやめてくれませんかね?


 止めるよう以前に言ったら「ボスはボスでしょう?」と言われたので無駄なのはわかってはいるが……。



 セリアさんはそのままメイドさんによって運ばれて行く。


 ミレーユさんや……そんな怖い顔をしないで下さい。


 俺にも意味がわからないんです! 無罪なんです!


【叡智】さん、説明お願いします!


[……セリア嬢はヘタレな君に一目惚れしているね……]


 いや、惚れられる要素が皆無なんだが!?


[……無性に殴りたいわー。鈍感系とか流行らんねん]


 何で関西弁!? しかも鈍感系言われたし!


 それより、俺の奴隷ってどゆこと!?


[『天眼』の計らいにより、ゴウキの所有物は全てエル=オーガストの物になりました。ちなみにゴウキとサガンは……]


 なにそれ……初耳なんだけど!


 面倒臭い事増えてるし!


 というか元三光の2人はどうなったのさ!?  なにそのご想像にお任せします的な感じ!?


 とりあえず害が無いならいいか……。


 セリアさんがあんな事を言ったのは俺の奴隷だからか……。


 早く奴隷から解放しよう。


 ミレーユの嫉妬ゲージがあるならば──


[既に振り切っています]


 ……それヤバくね?


 俺はミレーユを見るも微笑を浮かべているだけだ。


 ポーカーフェイスで全くわからない……。


『子孫はいつか俺のように刺されるな! さすが子孫っ!』


 そんな所を受け継がないで欲しい……。


 現在、このままであれば──『氷柱』を突き刺されそうなんだけど!?


 何か気の利いた言葉を言わなければ──



「ミレーユ」


「何かしら?」


 まるで昔のように突き放すような言い方だ……生半可な言葉じゃダメだ!


 本音だ! これは本音を言わないとダメだ!


 ありのままでミレーユの事が大好きだと伝わる内容が良い。


 ここで言えないならミレーユに刺されるかもしれないんだ!


 逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ──


 俺は深く息を吸い込み、言葉を紡ぎ出す──


「──夜はミレーユと過ごしたい」


「──!? ふふふっ、今日ね? もちろんそれは今日よね?」


 どうやら、この答えは正解のようだ。


 だが──


 ここには仲間全員がいる事を今更ながら思い出す。


 必死過ぎて忘れてたわ!


 というかフレアもいたんだったぁぁぁぁっ!


 俺はフレアを見る──


「添い寝は良い物なのです」


 良しっ! セーフだ!


 俺はまた一つ壁を乗り越えた!


 フレアはやっぱり心も天使だな!



 ちなみに夜はフレアも部屋に添い寝をしに来て3人仲良く寝る事になった……。



 フレアが寝た後は──


 完全に俺は理性との戦いになったけど……。

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