第90話 臨時会合
〜アメリア視点〜
「急な招集に集まって頂き感謝しますわ。では──緊急会合を始めますわ」
私の言葉に周りは大歓声を上げる。
これはいつもの会合とは一味違いますわ。
先程、派遣して帰ってきた『竜の牙』のパーティリーダーであるクロムが帰還しました。
その報告をこれから受ける所です。
今から楽しみですわ。
一部の武闘派の中ではサポートでしかエル様を評価していない連中もいます。
クロムはその筆頭です。
サポート以外も凄いとミリーからの報告も受けていました。なのでクロムにはエル様はサポートだけではないと知らしめる為に案内役として派遣しました。
更に言えば──
最近、この会合に参加するようになったタリアさん親子が事の始まりです。
娘であるナナさんが、エル様の計らいにより──ここにいるリックに弟子入りする為に来ています。
このリックは幼女の敵なので、心配なされたエル様より、私にもお手紙を下さいました。
全力で守る為に影を毎日つけています。
まぁ、それよりもこのナナさんが会合中にクロムの発言が許せなかったのでしょう。
「エルお兄ちゃんは強いよ!」
そんな発言から──
サポートしか目がいかなかった一部のメンバーが審議を確かめたいと騒いだのが始まりです。
もちろん、案内役というのは比喩で──
クロムがもし認めたなら、エル様をどんな手を使ってでも布教してくるように言っていました。
帰ってきた表情を見るに──
私の思惑通りに事が進んだみたいです。
報告が楽しみですわ。
「では、クロムさん──報告を──」
「はっ。まず、最初に俺が今回派遣された経緯だが──俺はエルは凄い奴だとわかっているが、それはあくまでサポートだけだと思っていた。だからこそ皆の言う凄さが全く理解出来なかった……だが──今回の件……これから説明するが、俺が体験した事は間違い無く──『英雄』の所業として問題無い上に、強さは現段階でも俺達を超えるかもしれん。そして、人としても尊敬出来ると確信した。俺はエルの為に──この命使っても良い」
クロムの言葉に全員が沈黙する。
私も言葉が出ません。
いったいクロムに何が起こったのでしょうか?
脳筋で戦闘ばかり頭にあるような人がここまで言うぐらいです。きっと凄い体験をしたと言う事なのでしょう。
そのままクロムは話を続けていきます──
要点を纏めましょう。
ギャンブル都市『キンブリー』では腐敗した上層部の三光の内、2人を蹴落とし、頂点に君臨した。
その過程で、エル様の旧友のお姉様と再会。その方を助ける為に奮起する。
仕組まれた試合にエル様は何かをして勝利させる。
人工の魔人が投入されるが、その人がかつての旧友であった。
魔帝国の『天眼』が邪魔をするも、それを振り切り──
魔人と成り果てた旧友を討伐する。
簡単にまとめるとこんな所でしょう。布教もしたようで何よりですわ。
案内役として派遣したクロムが奴隷落ちしかけていた事はこの際どうでもいいです。
エル様はご自分の力だけで最強の1人と名高い『天眼』を退けるのも凄いです。
それ以上に旧友──いえ、親友だった魔人を討伐した事にエル様は心を痛めていないか心配ですわ。
今すぐ私が駆け寄り抱きしめてあげたい──離れているのが忌々しいですわ。
しかし、これだけの事を為してしまわれるとは……確実にSランクの条件をクリアしていますね。
これで私達の計画にも支障は無くなりました。
しかし、エル様が実力を隠しているとミリーから報告を受けていましたが、『天眼』を相手に出来るレベルだとは……。
さすがエル様ですっ!
アメリアは早くお会いしとうございます。
──いえ、まだですわ。
まず、この事を布教しなければっ!
「書記っ! すぐ様この内容を演劇団に伝えてエル様の凄さを知らしめなさいっ!」
「はっ!」
書記は慌てて部屋を出て行きます。
これで、エル様の武勇伝は語り継がれるでしょう。
「アメリア様──俺はエルの為に命を賭ける所存だっ! (金も借りてるしな……)」
最後は小声で何を言っているかわかりませんでしたが──
「クロム、良い心構えです。派遣した甲斐がありましたわ。これからも忙しくなりますわ」
「「「──つ、ついに!?」」」
「計画は実行段階です。後はミリーにサブマスターであるミレーユ様とメリル様の許可さえ頂けたなら──「許可は貰っています」──クロム、良い仕事をしましたね。奴隷落ちしかけた事は水に流しましょう」
「この命──兄貴とフレアお嬢の為にっ!」
ロリコンの匂いがしますわ……。
「レーラさん、許可が降りたようですのでよろしくお願いします。それと──グランド様の進展状況はどうなっていますか?」
レーラさんは笑顔で頷いてくれます。
グランド元司教様も今では引退されたとは言え、教会の内部で発言権が強い方。この方は方々にもコネがあります。
「うむ、問題無い──ただ──」
「ただ?」
「もう少し派手にいきたい」
「「「確かにっ!」」」
グランド様の言葉に周りが便乗します。
「ダメです。エル様は目立ちたく無いお方です。嫌われます。やるならば──後戻りが出来なくなってからが良いでしょう」
「「「意義なし!」」」
「では──グランド様、後戻り出来なくする為に例の申請をよろしくお願いします。後──聖女の動きがきな臭いですので対応をよろしくお願いします」
「承知。何人か連れていくぞ? ついでにいけそうならやるが良いか?」
「必要なだけ連れて行って下さい。構いません。その時は必ず連絡して下さい」
さぁ、これで──
やっと、エル様の晴れ舞台の準備が出来ましたわ!
もうすぐ──もうすぐで──
会えますわっ!
その前に──
「元三光の2人の処遇は──」
どうしまょう? そう聞こうとしたら──
「「「死刑」」」
満場一致の答えが返ってきました。
では、ギルドを通してミリーに連絡、そして、あいつらを処分してもらわなければなりませんね。
おそらく捕まってはいるでしょうが──どうせ生かしておいてもろくな事になりません。
最悪──殺すまで行かなくても、苦痛を味わせてエル様に楯突いた事を後悔させてやりましょう。
後はミリーに託しましたよ?
────────────
元三光の2人は物語に特に支障は無い部分でしたので、簡単な描写にしております。後はどうなったかは皆様のご想像にお任せします。
次章は構想中です。ただ、大まかには決まっております。少し人によっては重く感じるかもしれません。
出来るだけ早く公開出来るようにしたいと思ってはいますので★やフォローで応援よろしくお願いします。
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