第23話 従魔よりご飯

 シロガネ曰く──


 従属契約は普通の【契約魔法】を使うとのこと……。


【魂の盟約】は持ってるだけで犯罪だとミレーユから今さっき聞いた。


 俺はそっと【隠蔽Lv10】スキルを使って誰からも見えなくしようとしたら……既に隠蔽していた。


 元々、俺のスキルは【隠蔽】スキルで人から見えなくしていて良かったと思った。


 危ない所だったな……危うく犯罪者になる所だった。


 鍛えてて良かった【隠蔽】スキル!


 前世の記憶でヤバそうなスキルは予め隠蔽していた事を忘れていたな!


【魂の盟約】の場合は対等な契約じゃないらしく、完全なる上下関係が構築され、しかも主が死ぬと繋がってる人も死ぬらしい……つまり、シロガネが叫んでいたのはそこが理由らしい。


 まぁ、知らなかったんだから仕方ないじゃないか……禁忌スキルっぽいだけあって、メリットも一応あるらしいけど、どうやら今回はシロガネが抵抗してらしいから俺にとったら護衛が出来た程度だ。


 【魂の盟約】は魂が直接繋がる為、強制解除が出来ないとも言っていた……。


 というか──


 こいつ……契約魔法なら解除する気だったみたいだ……油断も隙もないな。


 対等な契約であれば意見を言っても通るが……対等じゃない場合は下僕と変わらないみたいだ。


 まぁ、特に制限をかけるわけでも、酷い事するわけでも無いし良いだろう。


 ちなみに自称フェンリルを【鑑定】したら──


 名前:シロガネ

 スキル:【威圧Lv7】【体術Lv7】【咆哮】【雷魔法Lv8】【風魔法Lv8】【地割れ】【爪撃Lv8】


 ──表示するのが馬鹿らしいからしないよ?


 ユニークスキル:【一撃入魂】


 一応、フェンリル。【一撃入魂】の使用で現在は弱体化中。そんな中、【魂の盟約】を使った君は畜生だろうっ!


 あぁ、可哀想なフェンリル……いつか良い事あるさ!



 と相変わらずバグった表示をしていた。鑑定のレベルが10になった弊害だろうか? むしろ情報があまり開示出来ていない事実にびっくりだ……。


 とりあえず、一応は弱体化したフェンリルらしい……確かにその状態で【魂の盟約】を使った俺は畜生のような気がする。


【一撃入魂】とは一撃に全てを込めて攻撃する手段で、副作用が半端ないみたいだ。この小さな体はきっとそのせいなのかもしれない……おっさんみたいな声だし……。



「とまぁ、鑑定したら一応フェンリルらしいよ?」


 俺は2人に【鑑定】結果を伝える。


「「へぇ」」


 なんともそっけない反応だ……そんな事より、シチューの鍋をずっと見ている……。


「シチューは直ぐに作るから待っててね」


 満面の笑みで頷く2人。


 そんなにシチューが恋しいのか……。



『我が人間の下僕になる日がやってくるとは……』


 さっきからシロガネはぶつぶつとこんな感じだ。


 正直、念話だから頭に響いて煩い。


「シロガネはいらないのか?」


『我も所望する』


 まだ食うのか……。


「なら少し大人しくしてくれないか? 念話が煩くて集中できん」


『我はたくさん食べたいぞ』


「はいはい……」


 俺はまたシチューを作り始める。



 しかし、何故こんな所にフェンリルなんているんだ?


 ユニークスキルを使わないとダメな事態になるような危険があったのか?


 トラブルの予感がするぞ?


 一応、聞いてみるか。


「シロガネは何でこんなとこにいるんだ?」


『シチューはまだか?』


 このクソ犬が……。

 後は材料を煮込むだけだよ!


「シチューはもう少し時間がかかる。それで何でここにいるんだ?」


『ふむ、我を捕まえようとした奴から逃げて来たのだ』


「……捕まるような事をしたのか?」


『ペットにしてやろうと言っていたな……』


「……うん、厄介事の匂いしかしないな……後で『魂の盟約』を解いてやる」


『……これは『魂の盟約』……かけた本人にも解除は出来ん……故にどちらか死ぬまで解除できん……』


 ……嘘ん……本当に解除不可能なの?


 俺からなら出来るんじゃないの? かけたの俺だよ?


「えっ、嫌なんですけど?」


『これは一種の呪いみたいな物だ……かけた本人でも解除ができん……それに……ここにおれば美味い飯が食えるのだろう。我はここにいるぞ? そこの2人はそこそこ強いから我も安心して守られていられる』


 こいつ……。


 せめて、この見た目のような可愛らしい声ならまだ許せるのに……おっさんの渋い声だけにぶん殴りたくなる。


「本当に解除方法は無いのか?」


『ある事にはあるが……現実的に不可能だ……何でお前みたいな若僧が失われた『魂の盟約』など使えるのだ……』


 何で使えるかって──


 そんなもん、弱い俺がいつか護衛の従魔が欲しくて練習してたら使えたわっ!


 ……無理なら仕方ないか……というか俺が悪いのか!?


 まぁ、俺がちゃんと調べずに使ったのが悪いか……。



「お兄ちゃんは凄いのです!」


「フェンリル如きではエルの凄さがわからないようですね」


『……いや、お前らも十分おかしいぞ? 我は弱体化しててもそれなりに強いはずなんだが……』


 それは俺も思う。ミレーユはまだわかる……。


 だが、フレアは絶対おかしい……今まで戦った事ないんだぞ? まさか本能だけでこの強さなのか?!


「まぁ、俺達はその辺の奴らよりは強いパーティだしな……」


『主は普通だな……』


 うっさいわっ! そんなもんわかっとる!


「俺はサポート専門だからな。戦えないからシロガネが守ってくれよ?」


「そうね。この犬はそこそこ強いから護衛にはもってこいね」


 フェンリルを犬扱いしているミレーユはまだシチューの恨みを忘れていない。


「お兄ちゃん守れなかったら丸焼きにしてやるですっ!」


 フレアは最近脳筋発言が多い気がする……お兄ちゃんは将来が少し心配だ……。


『……ぐぬぬ……我が完全体であればこんな事にならんかったのに……』


「とりあえず、シチューでも食うか……」


 俺はもう考える事を放棄してシチューを食べる事にした。


 ちなみに食事の後に【魂の盟約】を解除しようとしたら出来なかった……。


 なんとか解除方法を探さなければ……厄介事に巻き込まれたくない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る