第52話 訓練中に敵!?
俺の【演説】スキルが発揮し、旅を出る前に訓練を行う事になった(俺の生存率を上げる為に)。
現在は街から出た所の迷惑にならなそうな場所にいる。
そして、目の前では凄まじい剣戟が繰り広げられている。
1人はフレア──
もう1人はカレンさんだ。
その直ぐ近くでミリーさんが待機している。
この3人で接近戦の訓練をしている所だ。
近くではミレーユが【氷結魔法】、メリルさんが【獄炎魔法】をお互いに撃ち合っている。
訓練を提案した俺だが──
ぶっちゃけ、内心ではこの人達頭おかしいんじゃないの? と思うぐらいドン引き中だ。
「ほぇ〜凄いですね」
そんな声が俺の隣から聞こえてくる。
──ナナだ。
俺達が街から揃って出て行く所を発見され、何故か付いてきた。
「うん、そうだね。皆には強くなってもらわないといけないからね。強敵に目を付けられちゃったっぽいし……」
「え?! 『白銀の誓い』がそこまでしないとダメな敵が!?」
俺は苦笑いを浮かべる。
そうなんだよ……出来れば相対したくない……。
でも、相対した時に対応出来ないのは非常に拙いんだよね。俺が……。
なので、現在は【応援】スキルの『スキル強化』を全員に発動しているのだ。
スキルレベルさえ高ければ後はどうにでもなる!
後から応用して行けば良い。そんなお粗末な考えだ。
現在──
フレアには【剣術】、カレンさんはユニークスキル【武芸百般】、ミリーさんは【短剣術】、ミレーユは【氷結魔法】、メリルさんは【獄炎魔法】を強化している。
カレンさんのユニークスキルはあらゆる武器の扱いが上手くなるスキルだ。ユニークスキルの割に効果は地味ではあるのだが、かなり応用が効く。
使いこなせれば近接最強になれるかもしれないスキルで──
過去の英雄の中にも、このスキルを持っていた人はいた。
ただ、周りに評価され辛い。
なんせ──
最初の頃は器用貧乏になるからだ。つまり大器晩成型のスキル。
きっと更なる成長をした時にカレンさんは開花する。
それこそ弱い討伐ランクSぐらいの魔物ぐらいなら倒せるだろう。
ブレッド……お前の娘は先が楽しみだよ。
そして、フレアとミリーさんは急な対応が出来るようになる為にスキルレベルの底上げする訓練を行なっている。
ミレーユとメリルさんは更なる高みを目指してもらっている所だな……。
周りの被害が甚大だけど……荒地になってるよ……。
街からけっこう離れて良かった……。
彼女達は上位魔法スキル持ちだ。上位スキルになると強力な為かレベルがほとんど上がらない。
今回はそこを底上げしている。
そして俺だが──
付いてきたナナと一緒に、たまに近付く魔物を狙撃している。
先程から皆の訓練を見て感嘆の声を上げているナナだが、そんなナナも十分おかしいレベルだ。
【魔弓術】を覚えてからというもの──
魔力で作った矢に火を纏わせて一撃一殺で魔物を確実に射殺している。
俺なんて魔力銃でなんとかなのに……。
一番俺が地味で弱いな……。
そんな感じで皆、もくもくと実力を上げて行っている。
俺も強くなりたいなぁ……。
せめて足手まといにはなりたくないな……。
……ん?
何かいる──な……。
敵──
では無い? 【危機察知】には全く引っかからない。だが、【索敵】には反応がある。
後ろか──
この感じは亡者だな……おそらく、この間に浄化しきれてなかったのかもしれない。
天に返ってもらおう。
「ナナ、後方の木に目掛けて火矢を放ってくれ──」
「了解」
ナナは弓を引き──
火を纏った矢を放つ。
直撃した音が聞こえるが、未だに反応が消えない。
面倒臭いな……。
「目標補足っ! 敵は亡者ですっ!」
「火矢を連射だ」
俺は振り向かずに、そのままナナに指示を飛ばす。
正直、【応援】の使いすぎで体が超怠いんだよ……動きたくない……。
「了解」
ナナとのやり取りは何かどっかの組織みたいみたいだな……。
矢を連続で放つ音と、爆撃する音が後ろから響き渡る。
──長いな……音が止まない。
「やったか?」
「目標、回避を続けて未だに殲滅できません!」
なんだろ、このノリは……。
とりあえず、俺も敵を目視するか……。
振り向くと──
矢をひらひら避ける亡者の姿が見えた。
俺は一瞬、凍りつく。
──速すぎる。
フレア並──いやそれ以上だ。
「ナナっ! そのまま魔力が切れるまで撃ち続けろっ! ──『聖域』──シロガネっ!」
「了解っ!」
『うむ』
俺は一瞬でヤバいと判断し、指示を飛ばして、広範囲の『聖域』を展開する。
『ふむ……』
亡者はフードを被っており、表情はよくわからないが、頷きながらこちらを見据える。
『聖域』の効果で少しは動きが鈍っているようだ。
「──『五月雨撃ち』──」
動きが鈍った瞬間にナナの火矢のシャワーが襲いかかる。
「──『落雷』──」
そして、大きくなったシロガネの【雷魔法】が凄まじい音と共に炸裂する。
砂埃が舞って前は視界は不明瞭だ。
訓練を行っていた皆も何事かとこちらを伺っている。
──くそっ、俺の【索敵】にはまだ反応が残っている──
「全員迎撃態勢だっ!」
俺の言葉と共に全員が真剣に頷き、武器を構える──
こいつは明らかに強敵だ。
この間のなり損ないの魔人なんかより間違いなく強い──
最近こんなのばっかだぞ!
俺は【応援】の『スキル強化』を一旦止めて、『身体強化』と【援護魔法】の『身体強化魔法』を全員に使用する。
……体が鈍りのようで動かない……キツい……。
砂埃が落ち着き、視界には亡者がこちらを見据えていた。
「──行くぞっ!」
「「「応っ!」」」
『──ストップっ! そこの君っ! 俺だよ俺っ!』
俺の掛け声に合わせて全員が駆け出すと慌てて俺に対して手をこちらに翳して静止するよう亡者は言う。
「「「……」」」
明らかに様子がおかしいと全員が俺に注目し、指示を仰ぐように見つめてくる。
俺もよくわかんないよ!
そもそも、亡者に知り合いとかいないし!
なんなのこの俺俺詐欺的なの!?
誰なんだよ!?
[過去の英雄『オーガスト』です]
しかも、発動してないのに勝手に【叡智】発動してるし!
情報ありがとよ!
オーガスト……オーガ……スト?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます