第53話 『スキル』

「初代オーガスト?」


 俺は【叡智】の文字を見て呟く。


『そうそう、それそれ! 俺、君のご先祖様! OK?』


 反応されてしまった……なんなのこの軽いノリは……全員唖然としてるぞ?


 ご先祖様と言われても顔知らないんだけど……何で俺の事知ってる感じなのさ!?


 初代オーガストと言えば──


 お伽話で有名だ。


 一度、剣を振るえば──


 大地は裂け、海は割れる。


 魔法を放てば──


 山は砕け、谷が出来る。


 荒れ果てた大地に魔力を込めれば──


 森林が出来上がる。


 ──今では信じられない伝説として語り継がれている。


 ご先祖様は凄いなぁ〜と思っていたんだが、今現在、その人は亡者となり目の前に軽いノリでいる。


 だが、さっきの戦闘ではシロガネの馬鹿みたいな攻撃で全くの無傷……伝説は嘘じゃない気はしている。



「そのご先祖様が何か用ですか?」


『ん? せっかくこの間、召喚されたから暇潰し? ──「成仏して下さい──『聖域』──」──効かない? みたいな? それでね、なんか自我に目覚めちゃってさ、そしたら君が見えたんだよね? 君って墓参りに来た事あるでしょ? 見た事あるなぁって思ったんだよね? だから雑魚の命令なんて無視したんだよね?』


 ちょっと話し方がイラッとしたので効かないだろうとわかりつつ会話中に『聖域』を使うが、全く効果が無い……本当に亡者なのだろうか?


 普通のゴーストであれば間違いなくあれで倒せるんだが……。


 とりあえず、自我があるから──なり損ないの魔人の指示に従わなかったと言う事はわかった……なんで『亡者召喚』でご先祖様が召喚されたのかは不明だが……。


 そして、小さい頃に父さんに連れられて阿呆みたいにクソ遠い孤島まで墓参りをした事も確かに記憶にある……。


 一応、筋は通っている……だが、話し方がイラッとする!


「……」


『とりあえず、敵意は全く無いからお話しないかい?』


 さっきと打って変わり真面目な声音と表情で俺に話しかけてきた。


「……わかった……皆は訓練を続けておいてくれ……」


 皆は頷き合図をしてくれる。


 もし、伝説通りの初代オーガストであった場合──間違いなく全滅する。話し合いで済むならその方が良い。


 俺は去り行く後をついて行く。


 誰もいない場所まで移動すると、オーガストは止まって話し出す。


『さてと……力が欲しいかい?』


「なにその魔王発言……」


 俺は即座にツッコミを入れる。昨日自分が言ったけど、言われるとは思っていなかったな……。


『しばらく見ていたけど──君は俺と同じく【応援】スキル持ちなんだろ?』


 ──!?


『何故わかった!? ──そう顔に書いてあるね? ふふっ、答えは簡単だ。君を【看破】したからさ』


【隠蔽】スキルを見破るスキルを使われたのか……。


「覗きの趣味は嫌われるぞ?」


『ふふっ、君も変わらないだろ? 俺の『』だしね? と言っても俺は君程──【応援】スキルを使いこなせなかったけどね』


『力が欲しいか?』この言葉の真意がわからない……。


 俺の事を『後継者』とも言っている。ただスキルを受け継いでいるからだろうか?


【応援】スキルは攻撃スキルが使えないはずだ。


 それなのにお伽話では攻撃スキルを使っていたであろう記述があったのを知っている。


 な・に・よ・り!


 目の前で初代オーガストは普通に【火魔法】で作ったでジャグリングをしながら俺をにやにやと口を歪ませて見ている。


 どういう事だろうか……。


「一つ聞きたい……何故──『この魔法が使えるのか? かな?』──!? そうだ……」


『ふふっ、それは──いつかわかる日が来ると思うよ? 俺みたいに力を欲し続ければね? 君には少し難しいかもしれないけどね』


「答えになっていないが?」


『う〜ん、説明が難しいんだよね……って何であるんだろうね?』


 スキルとは──


 神に与えられし力──


 そう教会が布教している。


 実際、俺も母さんからそういう風に教会の教えを言われ続けているからそういう物だと思っている。


 だが、初代オーガストの言い方だと違うのだろうか?


 スキルは何であるのか? そんな事考えた事もなかったな……あって当たり前の生活をしている。


 通常の下位スキルは基本的にがあれば誰にでも習得出来る。


 上位スキルは下位スキルを一定のレベルまで上げたり、カンストすると習得出来る事がある。


 前世の世界ではスキルという概念はゲームやラノベでしかなかった気がする。


 無理矢理当て嵌めてみると──


『スキルの適性=才能』


 ──だろう。才能を昇華する事によって更なる道が開ける的な感じだ。


 じゃあ、ユニークスキルは?


 これが一番謎だ……。


 そもそも、ユニークスキルは効果が異常な物が多い。一つあるだけでその道の天才という認識だ。


 習得出来る事もあると人から聞いた事はあるが──


 ほとんどは生まれつきだ。


 どうしても攻撃スキルが欲しくて、文献などで調べた時になどの記載を見た事がある。


 この情報だけを整理すると、やはりスキルは『才能』なのだろう。


 特にユニークスキルはというニュアンスの方が強い気がする。


 与えられる?


 ──!? まさか本当に神様やそれに近い存在みたいな者がいて与えているのか?!


 いや、仮にそうだったとしても──


 初代オーガストが魔法を使えている事の答えにはならない。


【応援】スキルは攻撃スキルと攻撃魔法スキルが使


 使えなくなる?


 いや、攻撃魔法以外の魔法は使えている。


 それに【生活魔法】の『着火』は使えている以上は【火魔法】も使えている事になるのか?


 つまり、発動が出来なくなっているのか?


 どういう原理でそうなっているかはわからないし、目の前の初代オーガストが『火球』を使っているのかも不明だ。



 この言葉が更に俺を混乱させる。


 根本的な事が間違っているのだろうか?


 わからない……。


『さぁ、スキルは何であるんだい?』


 初代オーガストが催促してくる。


「スキルは適性がある以上は才能だとしかわかりません……」


『半分正解だ。例えば、今使っているのは【生活魔法】だ。【応援】スキルを持っていると──【火魔法】のスキルは習得出来ない。これはわかっているよね? まぁ正確には少し違うんだが……』


 俺は頷く。ここまでは俺の予想の範囲内だ。最後の言葉が引っかかるな……。


『つまり、抜け道は存在しているんだよ。これの本当の意味を知る時がいつか努力していればわかる日が来る……俺は苦労して知った……だからこれ以上は教えてあげない──というか教えてあげたいけど。だから自分で答えを見つけてみると良い。ただ──魔法の抜け道は今教えてあげよう』


 全ては教えてくれないらしい……話せないとはどう言う意味だろう?


 だが、攻撃魔法だけでも使い方を教えてくれるなら十分だ。抜け道っていう事は前世でいうバグみたいな物なのだろう。


「どうすれば良いんですか?」


『素直でよろしい。君は努力を怠っていないからこそ力になりたいと思わせてくれる。君が今使える属性魔法は『火』『水』『風』『光』の4つだけだろう』


【生活魔法】の『着火』『飲水』『微風』『点灯』の事を言っているのだろう。


『その顔は察しがついているね? 【生活魔法】を極めれば初級魔法ぐらいは使えるようになる。どうすれば良いのか? 答えは簡単だ……魔力を通常より込めれば良いだけ』


「それだけ?」


 肩透かしをくらった気分だ……まさかそんな簡単な抜け道で使えるとは……。


「それだけだね。と言っても──通用する相手なんて限られるけどね? いつか君がに辿り着き、を続ければ、君なら俺ぐらい──いや俺以上に強くなれると思うよ?」


 ──!? 俺が伝説の英雄──オーガスト以上に!?


『まぁ、可能性の話だね。努力を続ければ、真実に辿り着く事が出来るはずだ』


 何の努力で、何の真実だろうか?


『さて、本題に移ろう』


「本題?」


『力が欲しいかい?』


「欲しい──皆を守れる力が──」


 俺は素直に声に出す。


『良い答えだ。じゃあ、君に取り憑くね? じゃないと──強くなる前に死ぬからね』


「はぁ?!」


 なんでやねん!

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