四章 ギャンブル都市で応援する──

第65話 甘えられる時に甘えてほしい

 大変な目にあった……。


 あの時程、【土魔法】が使えたらと思った事はないだろう……。


 高ランク冒険者が暴れると被害が半端ない……。


 さすがの俺も整地するような魔道具は持っていない。


 あったのはスコップ一本だけだ……。


『自分の【応援】の練習だと思って、きりきり尻拭いをしろ』


 と初代から言われ──


[囚人乙www]


 と【叡智】からも煽られながら、俺は【応援】の『身体強化』、【援護魔法】の『身体強化魔法』の重ね掛けで作業をした。


 気が遠くなる作業だと思われたが──


 約2倍強化の状態だと半端なく作業が早かった。


 ただ、広範囲過ぎてかなり時間はかかったし、副作用で何度も吐きそうになったが……。


 作業が終わったのは日が昇る頃だった……。



 まぁ、そんなこんなで明日には旅に出る。


 ついさっき、宿に戻ったが、寝れていないから体が怠すぎるし、眠いけど──


 もうひと頑張りだと思って、行動を起こす。


 まずは──


『朝食だっ!』


 初代が煩い……。


 そして、凄い速度で近付き声をかける者が現れる。


「主、飯だ」


 シロガネお前もか! というか室内で大きくなるなよ! 迷惑だろ!


 力が戻ってからはたまに大きくなっている。


 俺への風評被害が大きいからやめてほしい……。


 はぁ……朝ご飯何にしよう?


 うん、簡単なのにしよう……。


 ミンチがたくさんあるからハンバーグ作ってパンに挟むか……まぁ、ハンバーガーだな。


 玉ねぎをスライスして、レタス、マスタード、マヨネーズと一緒にハンバーグを切った丸いパンに挟んで出来上がりだ。


 もうこれで勘弁してもらおう。


 俺はハンバーグの種を焼き始める。


「良い匂いなのですっ!」


 ……フレア気付くの早いな……というか、昨日より速くなってないか?


 目で追うのがやっとなんだが?


「……もうすぐで出来上がるから待ってくれ」


「はいなのですっ!」


 うんうん、いつものフレアだな……昨日までは本当、心が痛くてたまらなかったからな。


 ご飯もシロガネが運んでたぐらいだし。


 今、お兄ちゃんは超絶嬉しいぞ?


「──出来上がり──皆に届けてくれるかい?」


 大量に作ったハンバーガーを大皿に乗せてフレアに渡す。


「──がってんなのです──」


 一瞬にして消え去るフレア……。


 若干声が遅れてたような気がする……音速に近くなってないよな??


 とりあえず、朝ご飯は基本的にそこまで皆食べないから(シロガネを除く)、これぐらいで大丈夫だろう。


 俺も朝ご飯を食べるか……。


『うんまっ! 子孫よ、もっと寄越せっ!』


 断るっ! 吐きたくないし嫌だ!



 さて、初代は無視して、次は──


 タリアさんとナナに挨拶だな。


 俺とフレアの2人で向かい、他のメンバーには馬車の手配と旅に必要な物の買い出しを頼んだ。


 道中で、俺がタリアさん達の身の安全の為に奴隷にしたチンピラ3人(既に解放済み)が真面目な格好でお店で働いているのを見て驚いた……。


 しかも──


「「「兄貴っ!」」」


 と呼ばれた……。


 正直、そこまでの知り合いでも無いし、凄い迷惑だった……しかも相手は年上だし……。


「人違いでは?」


 と俺は言い残し足早に去った。



 しばらくするとタリアさんとナナが住む家に到着する。


 ドアをノックするが出てこない。


【気配察知】には反応がある……気が付いていないのだろう。


「ナナちゃーんっ! フレアなのですっ!」


 フレアが大きめの声で呼びかけるとドアは開かれる。


 すると──


 まるでかのような姿で俺達の前に現れる。


「フレアちゃん!」


「ナナちゃん! 明日には出るから挨拶に来たのです!」


「そうなんだね! 私も明日にオーランド王都に行くんだ! そしてもっと強くなって──必ず『白銀の誓い』に入るね? だから強くなるまで待っててね?」


「──!? ナナちゃん待ってるのです!」


 2人は抱き合いながら再会を誓う。


 フレアとナナの2人はきっとこれから次代を担う人材だろう。


 将来、活躍する姿が目に浮かぶ。


 ナナは母親と共にオーランド王都に行くと言っている。間違いなく俺の知人に会う為だと推測出来る。


 ちなみにその知人の名前はリック。種族はエルフだったりする。


 あいつがロリコンじゃない事を祈ろう。


 まぁ、犯罪に走るような奴じゃ無いはずだし問題ないはずだ……たぶん。


 そういえば奴は幼児を見て──


「小さい子は遠くで見ているのが一番だ……エルにはこの気持ち──わかるだろ?」


 と俺に真剣な目で諭すように理解出来ない事を言っていたな……。


 もちろん、俺は「わからない」と答えた。


 前世で言う『イエス、ロリータ! ノー、タッチ!』の精神なのだろう。



「エルさん……命を助けてくれてありがとうございました……」


 リックの事を考えていたらタリアさんに話しかけられる。


「ん、あぁ……気にしなくて良いですよ。俺は出来る事をやっただけですから……命が助かって良かったです。ナナはまた10歳です。まだまだ親は必要な歳ですから……」


 やはり、親は居ないより居た方が絶対に良いと思う。


 たまに屑みたいな親もいるけど、親として子を育てている人の愛情というのはとても大事だ。


 少なくとも俺は父さんと母さんがいたから今の自分があると思っている。


 フレアには親はもういない……代わりに俺が愛情を注いでいるが、代わりにはなれない。


 ナナにはもっと親に甘えて、心を養ってほしい。


 それは今しか出来ない事だから……。



「つきましては──オーランド王都で強くなったら親子共々、加入の件よろしくお願いしますね?」


 タリアさんの不意打ちをくらい、俺は顔を引き攣る事しか出来なかった。



────────────


4章ついに開幕です!

執筆がかつかつですが、昨日久しぶりに★を頂けたので頑張りました\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/


もうしばし、目的地には到着しませんが、これも話の構成上致し方ない事ですのでよろしくお願いします。


今章ではギャンブル都市に向かいます。ギャンブルもしますが、苦手な方もいるかと思いますので作者お得意のコメディをぶっ込み、けっこう描写は省く予定です。


そして──


という流れになっていくと思います。


お付き合い頂けると幸いです。

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