第43話 アメリアの思惑

 〜アメリア視点〜


「さぁ、! エル様の新情報ですわっ!」


 私はアメリア──オーランド王国の王女であるアメリアですわ。


「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ」」」


 私の言葉に目の前にいる人達が雄叫びをあげて興奮しています。


 場所はギルドの一室を借り切っています。


 彼らは王都で有名な冒険者やエル様と縁のある人達です。


「早く情報をっ!」


「エルは何したんだっ!」


「ドラゴンでも単独で討伐したのか!?」


 皆さん、エル様の情報が待ちきれないようですわね。


 気持ちはわかります。私もそうでした。


 これは何の会合なのかは言うまでもありません。


 これはエル様の事を語り合う会合……つまり、ファンクラブみたいなものです。


 最近では数日に一回のペースでこういう会合を開いては情報交換をしてますの。


 私からはエル様の新情報、皆様からはエル様の普段のお姿や、過去の武勇伝などです。


 皆様、熱狂的過ぎてたまに大暴れしてしまわれます。


「静まらんかぁぁぁぁっ! 聖人様の話がきけんではないかぁぁぁっ!」


 鶴の一声で周りを黙らせたのは王都教会にいた元司祭様です。


 この人は一度は追いかけたものの──


 何故か戻って来られました。


 影の情報によると、何やらメリル様と途中で接触し、何か言われたそうです。


 それから急に王都に戻られました。


 すると──


 何故か私に謁見を求められたのです。


 最初は意味がわかりませんでしたわ……けれど、謁見に応じて会話していると──


 この会合を設立する準備と、その真の意味を見抜かれてしまっていました。


 これはメリル様の差し金でしょう……何か特有の情報網があるのかもしれません。


 さすがは元【六聖】……油断は出来ませんね。


 しかし、この元司祭様はエル様の事を神のように崇めておられます。この会合はエル様を慕う方のみでの構成ですが、たまに私もドン引きしますわ。



「ふふ、では──」


 私は皆さんに国境付近の街で起こった出来事を話していきます。


 ミリーは良い仕事をしてくれています。


 皆さん、先程とは違い──


 静かに私の話を傾聴していますわ。


 エル様の行って来た事は間違いではありませんわ。



「さすがエルだ!」


「私もその場にいたかったわ!」


「こんな事なら属性竜なんてさっさと倒してしまえば良かったぜ! くぅ〜っ、魔人と戦ってみたかったぜ!」


「なんで、カレンは抜け駆けしてるのよ! ずるいわっ!」


「「「そうだっ、そうだっ!」」」


 皆さんは私の話が終わると各々が感想を言い合いながら熱狂の渦に変わります。


 カレンさんが抜け駆けした事に皆さん怒っておられますね……しかし、私にもがあります。


 ここで、皆さんに追いかけられてしまえば私の計画に支障が出ますわ。


 この計画は元司祭様であるグランド様とミレーユ様の妹であるレーラさんの3人で着々と進めています。


 とりあえず、皆さんを落ち着かせる為に計画を話していきましょう。


「皆さんの気持ちはわかりますわ。そこで私から提案ですわ。皆さん私と共に──」


「「「それだっ!」」」


 私の提案に全員が一致しましたわ。


 これで更なる高みを目指せますわ。


 私も『白銀の誓い』のメンバーの1人ですもの。やる時はやります。バックアップは任せて下さいませ!


「さぁ、それでは方針も決まりましたので早速行動に移しますわ。レーラさん?」


「お任せ下さいっ! このレーラ、ファン1号として必ずや成し遂げますっ!」


 レーラさんも自信満々に答えてくれましたわ。


「皆さんも名に恥じぬ行動を」


「「「応っ!」」」


 きっと、これから楽しい事になります。


 エル様が知った時──


 きっと、お喜びになるかもしれません。


 そして、その時きっと──


 再会するのです。

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