三章 出発するまで応援する──

第44話 実はまだ旅に出ていない

 凄い寒気がする……シロガネと出会う前に襲った悪寒とは桁違いだ……。


 絶対良くない事が起こっている気がする。


「お兄ちゃん、顔色が悪いのですよ?」


「あ、あぁ、これぐらいは大丈夫だ。それより──【斬鉄剣】はこれから使い所を気をつけてくれよ?」


「大丈夫なのです! お兄ちゃんに迷惑かけないのです! もう足手まといにならないのです!」


 何か違う方向に大丈夫だと言われている気がするのは俺だけだろうか?


 周りの被害は考えてくれよ? 頼むぞ?



 ちなみにタリアさんを助けた後に、ナナがフレアの誘いに乗り──


 冒険者になった。


 とりあえず、俺はナナに合う武器を探す為に次々と使って貰った。


 そこで俺は気になったので【叡智】なら何かわかるんじゃないかと使う事にした。


 その結果──


 名前:ナナ


 ナナちゃんには【弓術】が一番だよ!

 絶対オススメっ!

 ここまで才能のある子はあまり見ないぐらいだよ?


 将来は見えない場所も一撃さっ!


 ついでに君のハートも射抜いちゃうよ?



 ……と、ふざけた文章が目の前に羅列する。


 とりあえず、それを元に半信半疑で弓を勧めてみたら──


 一回、弓を放つだけで【弓術】スキルを手に入れていた。


 ナナにその旨を伝えると大はしゃぎだった……逆に俺は凹んだが……。


 正直、羨ましいっ!


 俺なんてどれだけ練習しても攻撃スキルを習得出来ないんだぜ!


 まぁ、ナナが「弓が合うとかよくわかりましたね!」と言い、フレアは「お兄ちゃんに見抜けない物は無いのです!」と持ち上げてくれたので悪い気はしなかったが……。


 問題はその後だ……才能の格差というのだろうか?


 スキルLvが異常な速度で上がっていく……【応援】の『スキル強化』は使っていない。


 ちなみに俺は【応援】スキルのお陰で戦闘スキル以外のスキルレベルは上がりやすいが、なかったら凡人だ。


 途中にフレアが『白銀の誓い』に加入させたいと言ってきたが、母親もいるのにわざわざ別れさせてまで来るような旅じゃないから、「強くなったらね」とやんわり断った。


 しかし、言った後も訓練を行なっていくと──


 ナナは【弓術】特化の後衛に仕上がってしまった……。レベルは最終的に7になった。


 単純な比較をすると、普通にBランク冒険者並だ……。


 それ以外にも【鷹の目】【索敵】【必中】などの【弓術】に必要なスキルを調子に乗って教えてしまった。ついでに『スキル強化』も使って……。


 更に属性魔法もいくつか習得させると──


 上位スキルである【魔弓術】を習得する。


 俺は思った……その時点で正直、俺は遠距離から襲われたらヤられる自信があると。


「強くなったらね」その言葉が胸に深く突き刺さる。


 既に狙われたら俺の心臓ハートは射抜かれるだろう……【叡智】通りだな……。


 とりあえず、お茶を濁して訓練は終了した。


 この先、ナナは遠距離無双をするに違い無い。


 まぁ、ナナの事は一旦棚上げだ。


 それより、フレアの事だ。


 フレアにはユニークスキルで【神速】以外に【斬鉄剣】というのがある。


 これは切れ味を上昇する最上位のスキルだと認識している。


 これを見たいが為に、丁度良い魔物──オーガに特攻してもらった。


 ──結果は細切れだった……。


 通常であれば、硬い皮膚を持つオーガを細切れにするなんてフレアでは無理だ。威力が足りない……。


 最悪の事態になれば、頼りになるミレーユ達はいないので、俺が足止めしつつ逃げようと思っていたぐらいだ……。


 しかし、【斬鉄剣】の効果は予想以上にヤバかった。


 俺は無惨にサイコロステーキになったオーガに頬を引き攣らせる。


 後日、【剣術Lv7】になったフレアを連れてオーガの群れを探し出して検証する事にした。


 実は【剣術Lv7】では飛ぶ斬撃を撃てるのだ。


 飛ぶ斬撃と【斬鉄剣】を合わせて使う事が出来るかどうかの検証だ。


 そこで俺は更に衝撃的な光景を目にする。


 活気盛んに向かってくるオーガに対して──


 フレアは全力で横薙ぎに飛ぶ斬撃を放つ。


 そして、オーガと周りにある木々とまとめて横一文字にした。


 後方まで続く斬撃はもはや災害級の威力だろう……。



 オーガはきっと──


『小娘よ……天晴れだ』


 と──そう思ったに違いない……。


 凄く清々しい顔をして死んでいた(鬼顔だから正直わからないが、きっとあの穏やかな死に顔はそうに違い無いはずだ)。



 その時のフレアは──


「お兄ちゃん、殲滅完了なのです!」


 とジャンプをして喜んでいたが、俺とナナは災害クラスの攻撃にドン引きしていた。


 その時、たまたま一緒にいたシロガネは『主の妹は異常だの』と念話を送ってきたので俺は頷く事しか出来なかった。


 とりあえず、フレアの強化は良い感じ? で進んでる気がする。ナナも十分、冒険者でやっていけるだろう。



 俺も他に攻撃手段増やさないとダメだな……。



 それと、【叡智】のミッションを達成した俺は報酬は無いのかと問いかけた──


 結果返って来た返事は──


[生き残れたのは誰のお陰でしょうか? 報酬は貴方の命で十分でしょう? それに犬の能力も使えたんだからおまけ付きです。感謝してひれ伏すが良い]


 と凄い態度が大きい返事だった……。


 文字に向かって殴ったのは言うまでも無いだろう。



 ちなみに俺達『白銀の誓い』はまだ街から出ていなかったりする。


 少し、メンバー間で揉めているのだ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る