第75話 この勝負は俺の今を体現している!?
おっさんはオープンで勝負をするらしい。俺の反応を見る為だろう。
カードは4。
エースが来るかと思ったが4だ。おっさんも一瞬表情を歪ませていた。予想外なのだろう。
【叡智】が何かしたのだろうか?
俺めくるフリをしただけでカードちゃんと見れてないからな……14よりは高いのだろうか?
いや、きっと高いのだろう。それ以下の数字でストップするなんてあり得ないからな。
[煽れ]
はいはい。
これも作成なのだろう。
「勝負するか?」
「いや、まだだ……」
おっさんはカードをめくる──
数字はエース。
合計15。おっさんは顔が引き攣る。
複数人を相手にするなら駆け引き次第で勝負する数字ではあるが──
俺が2枚で自信満々にストップしている為、まだ次のカードを引かざるをえないだろう。
更にカードをめくるおっさん──
数字は3。
合計18。
普通ならここで止める。
[煽れ]
またか……ここまで来ると狙いが何かわかってくるな。
「今度こそ勝負するか? そして後悔すると良い」
自分のカードを知らないだけに言いたい放題に言えるな。きっと【叡智】の事だ。性格良くないからおっさんを虐めているに違いない。やはり俺の数字は相手の数字より上なのだろう。
「いや……まだだ……わしがここまで追い込まれるとは……」
「なら早く引け」
「ぐぬぬ……」
おっさんは震える手でカードをめくる──
数字は──
4──
合計22──バストだ。
俺の──勝ちだな!
一瞬鎮まるも、大歓声が上がる。
俺は気になる自分のカードを見てみる事にする。
数字は合計12だった……。
まさかこれで勝負を挑むとは……【叡智】さん、半端ないっす。
おっさんも驚愕し、放心しながら何やら呟いている。
気持ちはわかる。俺もまさかこれで勝負するなんて思ってもみなかった……てっきり凄く良いカードだと思ってただけに驚きも半端ない。
煽れコールは要はプレッシャーを与えたかったのだろうと推測出来る。
[御名答〜こちらのカードは何が来ても2枚でストップ。ちょうど相手がイラついてシャッフルをミスったので、後はバストの一点狙いです〜]
てっきり、【叡智】という名前だけにカードを把握しているもんだと思ってたのに……。
[勝負はフェアにするべきでしょう。貴方はイカサマ無しで勝ったのです]
言葉だけを聞くととても良い……。だが、お前はイカサマに入らないのかが気になるな……。
[助言しただけです。誰にも認知されないからイカサマじゃありません]
なにそのゴリ押し。怖いわー。
[今の君の人生に相応しい勝負だったでしょう?]
にやにや顔で言っているような文章に腹立つが一理あって言い返せない……。
俺の現状は相応しく無い冒険者ランクだ。
仲間がいて、はったりでなんとかなってる気がする……まさしくこの勝負は今の俺を体現しているだろう。
だけど──訓練してるからそのうちに絶対ランクに見合う実力になって見返してやるからなっ! 俺だって強くなってんだから! 剣だけでオーク倒せるんだしな!
[草]
いつか絶対強くなって見返してやる……。
とりあえず、これで俺は胃痛から解放されるな……。
一安心していると──
「おわっ!?」
仲間全員が熱烈なハグをしてくれる。
「エル、さすがよ」
「ミレーユ……疲れたよ……」
精神的な疲労が酷い……。
「ふふっ、そうね。ゆっくり休みましょう?」
ミレーユの膝枕で休みたい……。
「エル君──これで大金持ちね? 新たな三光に乾杯っ!」
「「「乾杯っ!」」」
メリルさんの言葉に周りの人全員が乾杯の音頭を取る。
あー、そういえば三光に勝ったもんな──
って事は……俺が三光になるのか!?
……最悪だ……そうだ、フローに頼ろう。
なんせ友達だからな!
会いに行こう……そしてあわよくざ丸投げしたい……。
とりあえずは今日ぐらいはゆっくりさせてくれ……。
そう思っていると声がかかる。
「「「ボスっ! ご指示をっ!」」」
「えっ? ボスって俺? 何の? 故意に相手を陥れたりしなかったら、今まで通りで良いんじゃない?」
明らかに俺に向かって話しかけて来る黒服の集団……。
目の前で項垂れているおっさんの全財産を貰ったという事は──
経営してる店も部下も全部という事だよね。
雇用とか経営とか俺には無理だな……やはり、フローに譲って丸投げしよう。
「ボスっ! こいつの処分をどうされますか?」
こいつとは元三光のおっさんだ。
とりあえず、カジノへは出禁だろうな……イカサマ見破れる人がいない気がするし……というか現状見破れるのって【叡智】だけのような気がする……。
「とりあえず──おっさんは系列の店には出禁にする。後は通常業務に戻ってくれ。俺はもう寝たいんだ……」
「いえ、ボスが居なくてはままならない業務が滞っておりますのでご一緒願います!」
はぁぁぁぁぁっ!?
ふざけんなぁぁぁっ!
何で旅しようとしてるのにこんな事に……。
項垂れて俺は黒服の集団について行く。
とりあえず──
これで当初の目的は達成したな……これから故意的に奴隷落ちをさせる事も無いし、ここの従業員はクビにならずに済んだ。
俺のメンタルは現在進行形で沈みまくっているし、胃のダメージが半端ないけど──
それを除けば【叡智】の通り──丸く収まったな……。
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